「ちいさなりょうしタギカーク」(V.グロツェル/再話 G.スネギリョフ/再話 松谷さやか/文 高頭祥八/画 福音館書店 1997)
昔、北の果ての海辺に、タギカークという男の子が、お母さんと2人で暮らしていました。タギカークのお父さんは、このあたりで一番腕のいい漁師でしたが、5人の仲間と舟でクジラを捕りにでかけたとき、海で嵐にあって死んでしまいました。そこで、お母さんは、生まれた赤ん坊にお父さんと同じタギカークという名前をつけました。
ある朝、タギカークは、岩の下に生えているコンブを引き抜こうとしたところ、足を滑らせ、海に落ちてしまいました。気がつくと、岩かげに入り口がみえ、入っていくと、モリをもった男のひとがいました。タギカークが名乗ると、男のひとは仲間にむかっていいました。「この子は、おれの息子タギカークなんだよ! おれたちが、嵐にあって死んだあとに生まれたんだ」
お父さんはタギカークに、クジラとセイウチとアザラシの肉のかたまりと、モリをくれます。お父さんにいわれたとおり、肉のかたまりを穴倉に投げ入れると、肉は穴倉にぎっしり詰まり、タギカークはその肉を食べてたくましく成長します。そして、ある日肉がなくなると、タギカークはお父さんからもらったモリを手にして海辺にむかいます。
アジア・エスキモーの昔話を元にした絵本です。タギカークがじつにいい顔にえがかれています。エスキモーという言葉は、一部のアメリカン・インディアンが「生肉を食べるやつ」と軽蔑して呼んだことばだといわれ、カナダではエスキモーという呼び名を改め、かれらが自分たちのことを呼ぶ、イヌイットということばを公式な呼び名にしています。
が、この呼び名だと、自分たちをユイットと呼ぶ、ことばのちがうひとたちもいて、この民族全体を呼ぶのに問題があるので、ここではエスキモーということばを使ったと、本書が「こどものとも年中向き」(2009年1月号)として刊行されたときの付録「絵本のたのしみ」で高頭祥八さんは記しています。小学校低学年向き。
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