2009年6月30日火曜日

ちいさなお城











「ちいさなお城」(A・トルストイ/再話 E・ラチョフ/絵 宮川やすえ/訳 岩崎書店 1982)

「ちいさなお城」 お百姓が落としたつぼに、はえのぶーんぶんがやってきました。「だれのおしろ? おしろにだれかすんでるの」。はえはつぼに飛びこんで暮らしはじめました。つぎに、蚊のぴいぴいが飛んできてたずねました。「だれのおしろ? おしろにだれかすんでるの?」 はえと蚊は一緒に暮らしはじめました。つぎにやってきたのは…。

つぼにいろんな動物がやってきては、一緒に暮らしはじめるという、おなじくラチョフが絵を描いたウクライナ民話絵本「てぶくろ」と同系統の絵本です。はえと蚊のつぎは、ネズミ、カエル、ウサギ、キツネ、オオカミ、クマがやってきます。絵本としての出来映えは「てぶくろ」とくらべていまひとつ。絵だけのページがあったり、文章だけのページがあったりして、いささか読みにくいです。巻末のあとがきによると、ロシアでは、「てぶくろ」より「ちいさなお城」のほうがよく知られているのだそう。また、「てぶくろ」のつもりで読んでいると、ラストが乱暴でびっくりします。現在絶版。小学校中学年向け。

2009年6月29日月曜日

ニャーンといったのはだーれ












ニャーンといったのはだーれ(ステーエフ/作 西郷竹彦/訳 偕成社 1980)

こいぬは、だれかがニャーンといったような気がしました。でも、あたりをみまわしてもだれもいません。すると、まただれかがニャーン。こいぬは、ニャーンという声のぬしをさがしにでかけました。

めげずにねこをさがす子犬の姿がかわいらしい絵本です。ねこが意地悪くかげから様子をうかがっているのですが、それが子どもにわかるくらいの距離で読んであげられればと思います。小学校低学年向け。

2009年6月26日金曜日

なぞなぞえほんいろいろ その2












「なぞなぞのたび」(石津ちひろ/なぞなぞ 荒井良二/絵 フレーベル館 1998)

「リドル・ブック・シリーズ」の1巻目。2巻まで出版されています。2巻目は「なぞなぞのへや」(石津ちひろ/なぞなぞ 高林麻里/絵 2000 フレーベル館)。おそらく、「なぞなぞ100このほん」の影響でつくられた本でしょう。レイアウトがよく似ています。でてくるなぞなぞはこんな感じです。「きれいな はこに つめてあるのは きれいな メロディー さて いったい なあに」。見開きの右側に描かれた絵がヒントになっています。小学校低学年向け。













「どうしてかわかる?」(ジョージ・シャノン/文 ピーター・シス/絵 福本友美子/訳 晶文社 2005)

「世界のなぞかけ昔話」シリーズ(全3巻)の1冊です。ほかの2冊のタイトルは「あたまをひねろう!」「やっとわかったぞ!」(作者・画家はともに一緒)。内容は、とんち話をクイズ風にアレンジしたものといえるでしょうか。冒頭の「魚つり」を紹介してみます。

「ある夏の日のこと、2人のおとうさんと2人のむすこが湖へ魚つりにでかけました。あれこれ話しながらつりをしていると、昼までに1人1ぴきずつ魚がつれました。みんな魚がつれたので、2人のおとうさんと2人のむすこは、上きげんで家に帰りました。でも、つれた魚の数は、ぜんぶで3びきでした。
2人のおとうさんと2人のむすこ。1人1ぴきずつつれたのに魚はぜんぶで3びき。1ぴきも、にがしちゃいない。どういうわけか、わかるかな?」

巻末の「覚え書き」によれば、この話はアメリカの昔話だそうです。引用のとおり、体裁は絵本ですが、中身はお話ですので、本屋や図書館では、絵本の棚でなく読み物の棚におかれているかもしれません。大人が読んでも面白い絵本です。小学校中学年向け。

2009年6月25日木曜日

なぞなぞえほんいろいろ その1













「なぞなぞえほん(全3巻)」(中川李枝子/作 山脇百合子/絵 福音館書店 1988)

タテ、ヨコ13cmの小さな本です。なぞなぞはたとえばこう。「ひらくと おはなしが はじまって とじると おしまい」。ぐりとぐらも出演しています。幼児向け。













「なぞなぞな~に はるのまき」(いまきみち/作 福音館書店 1995)

はる、なつ、あき、ふゆと全4冊あります。なぞなぞはこう。「あさになると ひらき よるになると とじるもの な~に?」。答えは「め」。絵をみると「芽」とかけていることがわかります。幼児向けですが、小学校低学年のお話会にもつかえます。現在品切れです。

2009年6月24日水曜日

なぞなぞ100このほん














「なぞなぞ100このほん」(M・ブラートフ/採集 松谷さやか/編・訳 M・ミトゥーリチ/絵 福音館書店 1994)

「うまれたときから ひげが はえてるのは だれ?」
「とけいでは ありません でも カチカチ おとがします」
「ゆきのように まっしろで みんなが だいすき くちのなかにはいったら とけちゃった」
「ひが たつにつれて どんどん へっていくもの」
「めが つのにあって せなかに いえを しょっているのは だれ?」
……

 ロシアやウクライナのなぞなぞが100個入った絵本です。なぞなぞは、それぞれ絵がヒントになっています。ミトゥーリチのえがく絵は涼しげで、100個の絵のある本としても楽しめそうです。巻末に、採集したなぞなぞが、どこの民族のものか、記されています。幼児向き。

2009年6月23日火曜日

ぐるんぱのようちえん









「ぐるんぱのようちえん」(西内みなみ/文 堀内誠一/絵 福音館書店 1966)

ずっとひとりで暮らしてきたゾウのぐるんぱは、ジャングルの会議により、はたらきにでることになりました。最初はビスケット屋さん、つぎはお皿づくり。でも、大きなものばかりつくってしまうぐるんぱは、いつも辞めさせられてしまいます。

最後、いままでつくったものがすべて役立つ大団円をむかえます。どんな子どもでもよろこぶ定番絵本のひとつです。いま検索したところ、お話会用の大型絵本も1999年に出版されているようです。

2009年6月22日月曜日

ちいさなひつじフリスカ












「ちいさなひつじフリスカ」(ロブ・ルイス/作 金原瑞人/訳 ほるぷ出版 1991)

いつまでたってもちいさいフリスカは、みんなからからかわれてばかりいました。フリスカはあの手この手で自分を大きくみせようとしますが、いつも失敗していまいます。ところがある日、一匹のオオカミがやってきて…。

フリスカのがんばりが楽しく、かわいらしい絵本です。絵で物語る部分があるので、少人数でのお話会に向いています。小学校低学年向き。

2009年6月19日金曜日

空とぶじゅうたん












「空とぶじゅうたん」(マーシャ・ブラウン/再話・絵 松岡享子/訳 アリス館 2008)

インドの王、サルタンには3人の息子がありました。いちばん上の王子はフセイン、2番目はアリ、すえの王子はアーマッドといいました。サルタンにはまた、ノア・アルニハ王女という姪がひとりおりました。サルタンの薫陶をうけた王女は、たいそう美しく、機知に富んだ娘に育ちました。ところが、困ったことに、3人の息子たちは、みな王女を深く愛するようになってしまいました。そこで、心を痛めたサルタンは息子たちにいいました。「遠い国へ旅に出て、もっともめずらしい宝をもち帰った者を王女の夫とすることにしよう」

副題は「アラビアン・ナイトの物語より」。全48ページの読み物絵本です。話は長いので、自分で読める子むきです。絵の背景の色にまぎれて、文章が読みづらいところがあります。でも、マーシャ・ブラウンの絵は彩どり鮮やかで、とてもきれいです。

この物語で、3人の王子が手に入れる宝は、見たいものがなんでも見える象牙の遠眼鏡、においをかぎさえすればどんな病気も治る魔法のリンゴ、それから空とぶじゅうたんです。3人の王子はこれらの宝を用いて、病気の王女を救いだします。ここで、思い出すのは、ジプシーの昔話をあつめた「きりの国の王女」所収の「すてられた子どもたち」。この話にでてくる3つの道具は、いのちの水、なんでもうつせる鏡、空とぶきれです。主人公の子どもたちは、この3つの道具をつかい、王さまの病気を治します。似たような話はきっと、ほかにもまだまだあるのでしょう。

2009年6月18日木曜日

おひゃくしょうとえんまさま

「おひゃくしょうとえんまさま」(君島久子/再話 佐藤忠良/絵 「こどものとも」162号 福音館書店 1969)

エンマさまのお祭りに、村のひとびとはいろんなお供えものをもってやってきました。ところが、欲張りなエンマさまは、手下の小鬼に、「だれがいちばんお供えものをけちけちしていたか」とたずねました。「いつもここを通る百姓のやつですよ」と小鬼がこたえると、エンマさまは大いに怒りました。そこで、小鬼は百姓の稲が実らないよう、頭は細く、根っこは太くなる魔法をかけることにしました。ところが、ふたりの話は、堂守のおじいさんに聞かれてしまっていたのです。じいさんはこの話を百姓に教えました。「それならさといもをつくろう」と、百姓はさといもを植えました。

中国の民話です。以下はくり返し。百姓は、堂守のおじいさんに魔法の内容を教えてもらっては先手を打ち、ついにはお金持ちになります。真ん中が大きくなる魔法をかけられたとき、百姓はトウモロコシを植えるのですが、中国の民話にトウモロコシがでてくるのがすこし不思議な感じがします。この作品も、雑誌で出版されたきり本にはなっていません。童心社から出版された紙芝居がありますが、絵を描いたひとはちがいます。

2009年6月17日水曜日

ふしぎなたけのこ










「ふしぎなたけのこ」(松野正子/作 瀬川康男/絵 福音館書店 1966)

たろは母さんにいわれて、竹やぶにたけのこを掘りにきました。上着をたけのこにかけたとたん、たけのこがぐぐっと伸びました。あわてて上着をとりもどそうとしたところ、たけのこはたろを乗せて、空高くのぼってしまいました。はたして、たろはぶじ地上に降りることができるのでしょうか?

民話調の絵本です。話はダイナミックで、迫力のある絵がそれによくあっています。途中、本をタテにするところがあります(たけのこがとんでもなく伸びた場面)。小学校低学年むけ。世界絵本原画展グランプリ受賞。

2009年6月16日火曜日

おさるとぼうしうり













「おさるとぼうしうり」(エズフィール・スロボドキーナ/作 松岡享子/訳 福音館書店 1992)

昔、あるところに帽子を売り歩く行商人がいました。行商人は、ふつうの行商人のように品物を背中にかつぎませんでした。頭に、いくつも帽子をかぶり、帽子が落ちないように背筋を伸ばして売り歩いていたのです。ある日、朝から帽子がひとつも売れなかったので、行商人は木によりかかって、ひと眠りすることにしました。ところが、目をさましてみると、頭にあるはずの帽子がなくなっていました。いったいだれのしわざでしょう?

さるたちに帽子をとられた行商人は、なんとかとりもどそうとしますが、なかなかうまくいきません。それが、ひょんなことからうまく帽子をとりもどすことができます。お話会の定番絵本のひとつです。小さめの絵本ですが、少ない色数のグラフィカルな絵は遠くからでもよく見えます。小学校低学年向け。

2009年6月15日月曜日

ロンドン橋がおちまする!











「ロンドン橋がおちまする!」(ピーター・スピア/画 渡辺茂男/訳 ブッキング 2008)

「ロンドン橋がおちまする おちまする おちまする ロンドン橋がおちまする マイ・フェア・レディー」

マザーグースのおなじみの唄を絵本にしたものです。ページをめくると画面いっぱいにロンドン橋の大崩壊。まるで映画がはじまったよう。線画に水彩で色をつけたスピアのにぎやかな絵が素晴らしいです。巻末に原詩と楽譜、それに「ロンドン橋の歴史」という解説がついています。解説は完全に大人向けです。ロンドン橋の何度も何度もかけ直された歴史が手際よくまとめられていて、楽しい読みものになっています。

余談。「ロンドン橋」の詩の文句にでてくる「マイ・フェア・レディー」とはテムズ川だという説があるそう。これを知ったときはなるほどーと思いました。

 

2009年6月12日金曜日

ひつじかいとうさぎ

「ひつじかいとうさぎ」(内田莉莎子/再話 スズキコージ/絵 「こどものとも」234号 福音館書店 1977)

昔、あるところに羊飼いの男の子がいました。森で一匹のウサギをみつけた羊飼いは、囲いに入れて飼うことにしました。ところが、ウサギは囲いから抜け出し、森に逃げてしまいました。羊飼いが森にいくと、一匹のオオカミと出会いました。「ウサギが逃げちまったんでさがしにいくんだ。オオカミ、捕まえておくれよ」と羊飼いが頼むと、オオカミは「自分で捕まえな」といって駆けていってしまいました。

ラトビアの民話を再話した絵本です。羊飼いは、出会うものみんなにお願いをするのですが、ことごとく「自分でやれ」といわれてしまいます。ところが、クマだけが羊飼いの頼みをきいてくれ、それからすべてが逆転し、最後にはみんなうまくいきます。羊飼いが出会うのが、こん棒だったり、火だったり、川だったりするのが面白いところです。スズキコージの絵は、横長の画面をたくみにつかい、大迫力です。4歳から。

この作品も本になっていません。ネット書店で確認すると、「こどものとも年中向き」60号(1991)に再掲されたようです。

2009年6月11日木曜日

ラチとライオン









「ラチとライオン」(マレーク・ベロニカ/作 とくながやすもと/訳 福音館書店 1965)

ラチは世界中で一番弱虫な男の子でした。暗い部屋には入れず、友だちとも遊べません。ライオンの絵が好きなラチは、こんなライオンがいたらなんにもこわくないんだけどなあと思っていました。すると、ある朝、ベッドのそばに、小さな赤いライオンがあらわれました。

小さな赤いライオンをひと目みるなり、ラチは、「こんなちっぽけなライオンじゃ、なんの役にも立たないじゃないか」と笑いだします。怒ったライオンは、片手で椅子をもち上げたり、ラチを床に押し倒したりしたあとこういいます。「どうだい、僕は強いライオンだろう。きみも強くなりたいなら、ぼくが強くしてやるよ」

気の弱い男の子が、小さな赤いライオンのおかげで強くなるというお話。ラチとライオンの関係が胸に迫ります。また、小さな赤いライオンが、なんともいえず可愛らしいです。絵は、背景がほとんどないシンプルなもの。お話会の定番絵本のひとつです。小さい絵本なので、少人数のお話会にむいています。生活環境が変わるときなどにも読むといいかもしれません。勇気が得られることうけあいです。4歳から。

2009年6月10日水曜日

空とぶ船と世界一のばか











「空とぶ船と世界一のばか」(アーサー・ランサム/文 ユリー・シュルヴィッツ/絵 神宮輝夫/訳 福音館書店 1986)

ある村に年寄りの夫婦がいました。息子が3人いて、上の2人は利口でしたが、末の子は世界一ばかだといわれていました。あるとき、国の王様がおふれをだしました。「青空を自由に走りまわれる鳥のような船をもってきた者には、王女と結婚させてやろう」。上の2人はさっそく旅立ちました。そこで兄たちの真似をして、ばか息子も旅立ちました。

ロシアの昔話をもとにした絵本です。旅にでたばか息子は、不思議な老人の力により空飛ぶ船を手に入れます。そして、さまざまな仲間たちとめぐり会い、王様がだした困難も仲間の助けによって乗り越え、ついに王女と結婚します。ばか息子はなにもせず、それでいてすべてがうまくいくさまは痛快なほどです。シュルヴィッツの描く、空に浮かぶ船がじつに感じがでています。けっこう長い話なので、小学校低学年向き。

余談ですが、この話に似た話は、いろんな昔話集におさめられています。たとえば、フィンランドの昔話をあつめた「かぎのない箱」(岩波書店 1963)所収の「りくでも海でもはしる船」など。ただし、こちらはさし絵でみるかぎり、船に車輪がついているだけで、どうも空は飛ばないようです(文章だけ読むと、空を飛んでもいいような気もするのですが)。
それから、タイトルが大幅にちがいます。「空とぶ船と世界一のばか」というタイトルのインパクトはすさまじいものがあります。名タイトルです。

2009年6月9日火曜日

すてきなあまやどり












「すてきなあまやどり」(バレリー・ゴルバチョフ/作 なかがわちひろ/訳 徳間書店 2003)

ヤギさんのところに、ずぶ濡れのブタくんがやってきました。牧場で花をつんでいたブタくんは、雨に降られてしまったのです。「どうして木の下で雨宿りをしなかったんだい?」と、ヤギさんが訊くと、「したよ」とブタくんがこたえました。では、どうして、ブタくんはこんなに濡れているのでしょう。

ブタくんの説明はこうです。「ちっちゃな、ちょこまかネズミが1匹、雨やどりさせてって、ぼくの木の下に入ってきたの。それからハリネズミが2匹、バッファローが3匹、ヒョウが4匹…」
大勢の動物たちが雨宿りにきたので、ブタくんは押し出されてしまったのかと思いきや、じつは…、というお話。折りたたまれた大判のページがあり、ひろげると、子どもたちから歓声があがります。正にお話会むけの絵本といえるでしょう。読み聞かせるときは、文章を読んでから大判のページをひろげるか、一度ひろげて、また閉じてから文章を読むのか、悩むところです。

2009年6月8日月曜日

ちいさなねこ









「ちいさなねこ」(石井桃子/作 横内襄/絵 福音館書店 1799)

お母さん猫がみていないまに、子猫はひとりで庭にでてしまいました。子どもにつかまってしまいましたが、手をひっかいて逃げだしました。子猫はは通りに走りでます。大丈夫でしょうか。

主観的な部分と、客観的な部分が入り交じるタイプの文章です。「ひとりで でかけて だいじょうぶかな」と語り手が子猫の心配をしたりします。絵は水彩。よく遠目が効き、臨場感にあふれています。デフォルメがおさえめで、適度にリアルな犬猫の絵が素晴らしいです。幼児向き。

この絵本は「こどものとも傑作集33」とシリーズ名がつけられています。この、「こどものとも傑作集」は2007年7月から、2008年4月まで、38点が新規製版されました。今回紹介した「ちいさなねこ」もそのひとつ。新規製版では、新しく掻き下ろされた絵もあるそうなのですが、まだ未見です。