2010年2月26日金曜日

プンクマインチャ










「プンクマインチャ」(大塚勇三/再話 秋野亥左牟/絵 福音館書店 1992)

昔、ネパールにプンクマインチャという女の子がいました。プンクのほんとうのお母さんは、プンクが小さいころ死んでしまいました。継母は、チャンパという名前の自分の娘ばかりかわいがり、美味しいものはみんなチャンパにやって、プンクにはまずいものをほんの少ししかくれませんでした。そのうえ、仕事はみんなプンクにいいつけるので、プンクは毎日ヤギをつれて、遠い牧場まででかけなければなりませんでした。

ヤギたちのなかに、ドーン・チョーレチャという不思議なヤギがいました。このヤギは、キツネの頭とヤギの頭がならんでついている、めすのヤギでした。ある日、牧場でプンクがいつものようにお腹をすかせて悲しい顔をしていると、ドーン・チョーレチャがそばにきていいました。「これをお食べよ、プンク・マインチャ」。ドーン・チョーレチャはヤギの頭の角からパンをころりとだし、甘い豆のスープをかけてくれました。

こうして、ドーン・チョーレチャから毎日食べものをもらっていたプンクでしたが、ある日、チャンパにパンを食べているところをみつかってしまいます。チャンパはお母さんにいいつけ、そのためドーン・チョーレチャは殺されて、みんなに食べられてしまいます。

後半は、埋められたドーン・チョーレチャの骨からヤモリーというおまんじゅうがどっさりなった木が生えてきて、プンクがそれを食べていたところ、鬼の夫婦にさらわれてしまうところから。プンクの受難はまだまだ続きますが、もちろん最後には、なにもかもうまくいきます。話は長いですが、不思議な展開が続くので、最後まで面白く読むことができます。絵を描いている秋野さんは、この絵本の舞台、ネパールで暮らしたことがあるそうです。小学校低学年むき。

2010年2月25日木曜日

あるげつようびのあさ












「あるげつようびのあさ」(ユリ・シュルヴィッツ/作 谷川俊太郎/訳 徳間書店 1994)

ある月曜日の朝、王様と女王様と王子様がぼくをたずねてきました。でも、ちょうどぼくは留守でした。そこで、火曜日の朝、王様と女王様と王子様と騎士が、ぼくをたずねてきました。でも、ぼくはやっぱり留守でした。そこで──。

毎日、人数を増やしてたずねてくる王様たちですが、いつも〈ぼく〉に会えません。「でもぼくはるすだった」と書かれたページに、なぜ〈ぼく〉が留守だったのかがえがかれています。最後、ようやく王様たちは〈ぼく〉に会えるのですが、会いにきた理由がじつに洒落ています。ほかにも、絵にいろいろな仕掛けがある楽しい絵本です。小学校低学年むき。

2010年2月24日水曜日

ウルスリのすず










「ウルスリのすず」(ゼリーナ・ヘンツ/文 アロワ・カリジェ/絵 大塚勇三/訳 岩波書店 1978)

高い山の奥の貧しい村に、ウルスリという男の子が住んでいました。あしたは鈴行列のお祭りです。ウルスリは大きい子たちと一緒に鈴を借りにいきました。そうすれば、大きい鈴がもてると思ったのですが、大きい子たちにひっぱられ、突き飛ばされて、いざもらう番になってみると、一番小さい鈴しかもらえませんでした。これでは、行列で先頭を歩くことはできませんし、鈴に木の実やお菓子を入れてもらうこともできません。ウルスリは悲しくて涙をこぼしました。

でも、山の夏小屋の壁に大きな鈴がかかっていたのを思い出し、ウルスリはひとりで山にむかいます。はたして、ウルスリは念願の鈴を手に入れることができるでしょうか。

スイスの著名な絵本作家カリジェの名作です。力強い描線で、スイスの自然や村の暮らしが美しくえがかれています。小学校低学年向き。

2010年2月23日火曜日

スマントリとスコスロノ












「スマントリとスコスロノ」(乾千恵/再話 早川純子/絵 松本亮/監修 福音館書店 2009)

ジャティサロノという国の山奥に、スマントリとスコスロノという兄弟が生まれました。ととのった顔立ちのスマントリは、大切に育てられ、美しい若者に育ちました。いっぽう、顔や姿があまりにもみにくく恐ろしかったスコスロノは、生まれてすぐに森の奥の谷底に捨てられてしまいました。ところが、スコスロノはたくましく生きのび、森のなかで暮らしながら、不思議な力を身につけていきました。スコスロノはときには暗闇にまぎれて兄さんのスマントリを訪ね、遅くまで話しこみました。ふたりは仲のいい兄弟だったのです。

その後、スマントリはマエスパティ国の王、ハルジュノソロスのもとではたらくことになり、スコスロノは兄をかげから支えます。が、運命はこの兄弟を引き裂いてしまいます──。

インドネシアにつたわる影絵芝居ワヤンをもとにした絵本です。巻末に詳しい解説がついています。絵は、版画で影絵の感じを再現したもの。たたかいの場面になると、レイアウトが変わり、大変な迫力になります。運命に翻弄された双子の哀切さが印象深い読物絵本です。小学校中学年向き。

2010年2月22日月曜日

エルシー・ピドックゆめでなわとびをする












「エルシー・ピドックゆめでなわとびをする」(エリナー・ファージョン/作 シャーロット・ヴォーク/絵 石井桃子/訳 岩波書店 2004)

エルシー・ピドックは生まれついてのなわとび上手でした。エルシーが7つになったころ、その噂はケーバーン山にすむ妖精たちの耳にも届きました。なわとび師匠のアンディ・スパンディに弟子入りしたエルシーは、月に一度、三日月の晩、夢のなかで起き上がり、眠ったままあらゆる秘術を教わりました。そして、1年たつと、もう人間にも妖精にも肩をならべる者のない、なわとび名人になりました。

さて、それから長い年月がたち──。あるとき、性悪な領主があらわれて、ケーバーン山に工場を建てるのだと、村人を立入禁止にしてしまいます。そこで、なわとび名人の女の子、エレン・モルトマンが山で泣いていると、枯れた木の葉のような声が聞こえてきます。「心配ごとは、とんではねとばしてしまわなければいけない」。そこで、エレンが事情を説明すると、声は、「領主のところにいって、こうつたえるのだよ」といいます。「ケーバーン山でなわとびをしたことのある者は、ひとり残らず順番になわとびをさせるように。そして、最後のひとりがとび終えたら、工場のレンガを積みはじめてもよいと」

エレンは、声の主のいうことを村人につたえ、村人はそのとおりに書類をつくり、領主に判を押させます。そして、三日月の晩、ケーバーン山には村人や妖精たちがあつまり、最後のなわとび大会が開催されます──。

ファージョンのお話に、シャーロット・ヴォーグが絵をつけた絵本です。さっと描かれたような、ヴォーグの絵が素晴らしいです。また、絵と文章の配置がじつによく考えられています。読みはじめたらやめられず、また読んだあとは深い感銘をおぼえる、傑作読物絵本です。

2010年2月19日金曜日

こがねのあしのひよこ












「こがねのあしのひよこ」(秋野ゆきこ/再話・絵 福音館書店 1998)

昔、貧しい年寄りの夫婦が一羽のメンドリを飼っていました。あるとき、メンドリが黄金(こがね)の足をしたひよこを生みました。このことは、たちまち国中に知れ渡り、王様の耳にも入りました。王様の命令で、夫婦がお城にひよこをもっていくと、王様はひよこの片足を切りとり、自分のものにしてしまいました。夫婦はたいそう悲しみましたが、ひよこは元気にすくすく育ちました。そして、ある日のこと、ひよこは自分の片足を返してもらおうと、王様のところにいくことにしました。

片足でぴょんぴょんと出発したひよこは、途中キツネやライオンやトラに出会います。みんな、ひよこの旅につきあおうとするのですが、すぐにくたびれてしまいます。そこで、ひよこは、では、つれていってあげましょうと、キツネやライオンやトラをひと呑みにして、王様のいるお城をめざします。

じつに豪快なひよこのお話です。なんでも呑みこむひよこの活躍に、胸がすくことうけあいの一冊です。小学校低学年向き。

2010年2月18日木曜日

しろいむすめマニ









「しろいむすめマニ」(稲村哲也/再話 アントニオ・ポテイロ/絵 福音館書店 1997)

昔むかし、アマゾンのジャングルに住むひとたちは、だれも作物のつくりかたを知りませんでした。そのため、木の実や動物がとれなくなると、べつの場所にうつらねばなりませんでした。あるとき、村長の息子に、ひとりの女の子が生まれました。真っ白な肌をしていたその子は、マニと名づけられ、大切に育てられました。マニはすぐ大きくなり、ふた月もすると、お母さんの仕事を手伝うようになりました。そして、織物をつくることも、土で水瓶や人形をつくることも、だれよりも上手になりました。ところが、1年たつと、マニは力が弱り、食べることもうごくこともできなくなってしまいました。そして、とうとうそのまま息を引きとってしまいました。

その後、マニは埋葬されるのですが、何度もお母さんの夢のなかにあらわれます。そして、あるとき、日照りが続き、食べものがなくなって、村人たちがべつの場所にうつろうとしたとき、一羽の鳥が飛んできて「マニがよんでる、マニがよんでる」と鳴きだします。村人たちが、マニの埋められたところにいってみると…。

本書の副題は「アマゾンのイモのはじまり」。なぜ、イモでパンをつくって食べるようになったのかという、穀物起源譚です。素朴さのただよう絵が、物語にぴったりあっています。小学校低学年向き。

2010年2月17日水曜日

びんぼうこびと












「びんぼうこびと」(内田莉莎子/再話 太田大八/画 福音館書店 1998)

ある村に、ひとりのお百姓がすんでいました。それはそれは、はたらき者で、朝から晩までせっせとはたらき続けました。それなのに、どういうわけか、お百姓は村でいちばんの貧乏人でした。ところが、ある日曜日、いつものようにはたらきにでたお百姓は、めずらしく、大きなパンとベーコンの切れっぱしをもって帰ることができました。子どもたちが喜ぶ顔をみると、お百姓はたまらなく嬉しくなり、バイオリンを弾きはじめました。お百姓は村でも評判のバイオリン弾きだったのです。

さて、お百姓のバイオリンにあわせて家族で踊っていたところ、お百姓はなにやら小さいものがうごいているのに気がつきます。じつは、それが「びんぼうこびと」。お百姓のうちがこんなに貧乏なのは、こいつらのせいだったのです。そこで、お百姓はびんぼうこびとを追い出そうと、一計を案じます。

ウクライナの民話をもとにした絵本です。お話会の定番絵本のひとつ。話は「おはなしのろうそく」にも入っています。小学校低学年向き。

2010年2月16日火曜日

あいにいくよ、ボノム












「あいにいくよ、ボノム」(ロラン・ド・ブリュノフ/作 ふしみみさを/訳 講談社 2005)

赤い山のふもとに住むエミリーは、ある日、望遠鏡で山のてっぺんにある木をみていました。すると、木の下に、頭にとげのある、なんだかおかしな生きものをみつけました。生きものは、歩いているときもありますが、たいていは木のそばでぼんやり座っています。ある晩、エミリーはベッドに腰をかけて考えました。「あの子はどうして山のてっぺんにひとりで住んでいるのかしら?」。翌朝、エミリーは山にのぼっていきました。

山のてっぺんで、エミリーは生きものと会い、ボノムと名前をつけます。エミリーとボノムは仲良くなりますが、いっぽうエミリーが帰ってこないのを心配したお父さんとお母さんが、このことを市長に相談し、ボノムは警官につかまってしまいます。

絵は白黒で、ところどころに赤がつかわれています。躍動感のある線でえがかれた、洒脱な絵が魅力的です。ボノムはなんだかわからない生きものですが、ちょっと男の子っぽく(ボノムとはフランス語で男の子という意味だそうです)、じつに愛らしいです。巻末の作品紹介によれば、作者は「ぞうのババール」の作者、ジャン・ド・ブリュノフの長男だそうです。小学校低学年向き。

ところで、この絵本は「ボノム」(すえまつひみこ/訳 福音館書店 1994)を改題、改訳したものです。手にとると、「あいにいくよ…」のほうが、表紙の紙が厚い感じがします。エミリーがベッドで考えるところは、「ボノム」だとこうなります。「どうしてあの子はあの山にひとりぽっちでいるのかしら?」

こねこのミトン











「こねこのミトン」(クレア・ターレー・ニューベリー/作 劉優貴子/訳 講談社 2000)

リチャードは猫が大好きな男の子です。道で猫に出会うと、かならず挨拶をします。まだ小さいリチャードは、猫を飼うことはできなかったのですが、ある日、お母さんと一緒に市場にいくと、とても可愛らしい猫が売られていました。そこで、リチャードは、ぼくもうすぐ6歳だとお願いしました。お母さんもとうとう許してくれて、リチャードは子猫を飼うことができるようになりました。そして、子猫にミトンという名前をつけました。

さて、リチャードのうちで暮らすことになったミトンですが、ひょんなことから家からいなくなってしまいます。そこで、お父さんが新聞に広告をだすと、いろんなひとがいろんな猫を(犬も!)みせにきます。はたして、ミトンはぶじにリチャードのもとにもどってくるのでしょうか?

水彩でえがかれた子猫がたいへん愛らしい絵本です。作者のニューベリーはこの絵本で、一躍「ねこの画家」として有名になったそう。「サリーとライオン」(光村教育図書 2000)の解説によれば、住所がなくても「ねこの画家」と書いてあれば、手紙が届くほどだったということです。

2010年2月12日金曜日

スヴェンさんの橋











「スヴェンさんの橋」(アニタ・ローベル/文と絵 松井るり子/訳 セーラー出版 1993)

川のほとりの小さな村に住むスヴェンさんは、はね橋の番人をしていました。スヴェンさんは、毎日ていねいに橋の手入れをし、船がくると、はね橋を開いて船を通してやりました。ところが、ある日、王様の乗った大きな船がやってきました。スヴェンさんは大急ぎではね橋を開きましたが、王さまは待ちきれません。「うて!」と王様が叫んだかと思うと、大砲が火を吹き、橋はこなごなになってしまいました。

このあと、スヴェンさんは渡し船で川をいききするようになるのですが、でも、やっぱり橋があったほうが便利です。すると、ある夜ふけに王様の馬車がやってきて、川に転げ落ちてしまいます。最後には、だれもが納得できる素敵なラストが待っています。本書は、アニタ・ロベールの最初の絵本だということです。小学校低学年向き。

2010年2月10日水曜日

きみとぼくのネコのほん












「きみとぼくのネコのほん」(トミー・デ・パオラ/作 もりしたみねこ/訳 ほるぷ出版 1990)

パトリックは立て札をみて、トゥインクルおばあちゃんの家に子ネコをもらいにいきました。トゥインクルおばあちゃんのうちには、ネコがものすごくたくさんいます。おばあちゃんは、パトリックに、ネコについていろんな説明をしてくれました。

パトリックとトゥインクルおばあちゃんの会話で話がすすむ絵本です。おばあちゃんはじつに物知り。シャムネコは宮殿を守るために訓練されていたとか、アイリッシュ海のマン島がふるさとの、頭もお尻もころころしたマンクスは、前足が短く、ときどきピョンピョンとぶので、昔のひとはウサギの仲間だと思ったとか。 それから、もちろんネコの飼いかたについても。トイレのしつけについての、トゥインクルおばあちゃんの説明はこう。

《ネコをしつけるのは、とてもかんたんよ。子ネコをトイレに入れて、足をこすりつけるの。2~3回やれば、ネコはぜったいにまちがえないわ。トイレが、ちゃんと、きれいになっていればね》

ネコを飼ったことがあるひとなら、大いにうなずくことでしょう。現在品切れ。小学校中学年向き。

2010年2月9日火曜日

へんなどうつぶ










「へんなどうつぶ」(ワンダ・ガアグ/作 わたなべしげお/訳 岩波書店 1978)

ある山奥に、ボボじいさんというおじいさんがいました。ボボじいさんは、山の洞穴の入り口においしい食べ物をたくさんならべ、リスや小鳥やウサギやネズミに食べさせていました。ところが、よく晴れたある日、これまでみたこともないような、変な動物が、ボボじいさんのところにやってきました。「あんたは、なんちゅうどうぶつだい?」とボボじいさんが訪ねると、「ぼか、どうぶつじゃない、ぼかどうつぶ!」と、変な動物はいいました。しかも、変などうつぶは、おじいさんのだす食べ物がみんな気に入りません。どうつぶは、なんと人形を食べるのです──。

変などうつぶが、あちこちで子どもたちの人形を食べ歩いていると思うと、ボボじいさんはたまらなくなります。そこで、変などうつぶに人形を食べることを忘れさせるために、ボボじいさんはある名案を思いつきます。

心やさしいボボじいさんと変などうつぶのお話。前後の脈絡があるようなないような、なんとも不思議な味わいの絵本です。現在品切れ。小学校低学年向き。

2010年2月8日月曜日

大あらし










「大あらし」(ディヴィッド・ウィーズナー/作 江国香織/訳 ブックローン社 1995)

大あらしがやってきました。デイヴィッドとジョージは、そとにいた猫のハンニバルを家に入れてやりました。風はどんどん強くなり、とうとう停電になりました。その夜は、暖炉のそばで食事をしました。翌朝、あらしは去り、大きな木がとなりの庭にまたがるようにして倒れていました。

デイヴィッドとジョージは倒れた木で、ジャングルにいったり、宇宙にいったりと、さまざまなごっこ遊びに興じます。2人はすっかり倒れた木が気に入ったのですが、突然終わりがやってきます。

ウィーズナーの絵は非常にリアルで、映画の一場面のようです。2人の遊びにつきあうようにして、猫のハンニバルがいつも画面(といいたくなる)に入っているのがおかしいです。最後のページは洒落が効いています。読物絵本。小学校中学年向き。

2010年2月5日金曜日

コブタカタブラ








「コブタカタブラ」(スーザン・メドー/作 ひがしはるみ/訳 フレーベル館 1996)

きのう、コブタちゃんがうちに帰ると、家中のみんなが心配して玄関で待っていました。というのも、その日、コブタちゃんは学校にいかなかったからです。コブタちゃんはみんなに、学校にいかなかったわけを話はじめました。学校いきじゃないスクールバスに乗ってしまい、降りたのはどこだかわからないところ。近道しようと、森の小道を通ったところ、オオカミにさらわれて──。

という、どこまで本当なのかわからない、コブタちゃんのお話。オオカミにつかまったコブタちゃんは、スープにされそうになるのですが、くり返し機転を効かせて、ぶじピンチを切り抜けます。絵は漫画風。コブタちゃんの話と描かれた絵がすこしちがっているところが、おかしみを誘います。間抜けなオオカミがでてくる話にふさわしい、ユーモラスな絵本です。小学校低学年向き。

2010年2月4日木曜日

つつみがみっつ









「つつみがみっつ」(土屋耕一/作 たざわしげる/絵 福音館書店 1975)

《まえからよんでもうしろからよんでもおなじぶんのえほん》と、この本の扉に記されています。つまり、この本は回文絵本。ママとパパとおでかけした、たんたくんが、でかけた先でさまざまな回文に出会います。

猫をみかけると、「かるいきびんなねこなんびきいるか」。
パン屋には売り切れの札が、「しなもんぱんもれもんぱんもなし」。
和菓子屋をみつけたたんたくんは、「ようかんかうよ」。
などなど。ささやかながら、ちゃんとストーリーがあるところに感心します。

発刊は1975年。絵はいささか古びていますが、読んで楽しい一冊です。小学校低学年向き。

2010年2月3日水曜日

はるにれ












「はるにれ」(姉崎一馬/写真 福音館書店 1981)

平原に一本すっくと立つ、大きなはるにれを主人公にした写真絵本です。秋から冬になり、雪が降って、積もって、朝がきて、昼がきて、夜がきて、春になって、葉をいっぱいに茂らせる様子がえがかれます。文章はありませんが、読んでいると、はるにれの気持ちがつたわってくるような気がします。小学校低学年向き。

以下は余談。「池澤夏樹の世界文学リミックス」(池澤夏樹/著 河出書房新社 2011)に、この写真絵本のことが紹介されています。それによると、姉崎一馬さんは、はるにれのところに4年間通ったのだそう。そして、このはるにれは、北海道豊頃町の、十勝川の川原に生えているということです。

2010年2月2日火曜日

あなたのいえわたしのいえ












「あなたのいえわたしのいえ」(加古里子/作 福音館書店 1991)

もし、家がないとしたら、ひとは暮らすのにとても困ります。雨が降ったら濡れますし、天気の良い日は太陽に照りつけられます。そこで、屋根がつけられました。おかげで、雨の日も晴れの日も暮らしよくなりました。けれども、風の日は困ります。あなたならどうしますか?

家というものがどんな風にできたのか、それを説いた絵本です。かこさとしさんの科学絵本はみなそうですが、考えの道すじがとてもわかりやすく書かれています。いままで気にとめていなかったことが、くっきり立ち上がってくるように感じられることでしょう。小学校低学年向き。

2010年2月1日月曜日

運命の王子










「運命の王子」(リーセ・マニケ/文絵 大塚勇三/訳 岩波書店 1984)

昔、エジプトに息子がいない王様がいました。息子をくださるように神様にお願いすると、願いがかない、男の子が生まれました。すると、7人のハトホル女神たちが、その子の運命をさだめるためにやってきて、こういいました「この子は、ワニかヘビか犬に殺されることになっている」。

さて、王様は砂漠のへりに石の家をつくらせ、そこで男の子を育てました。ある日、道をあるいている男のあとに、一匹の犬がついていくのを見た王子は、自分も犬がほしくなりました。そこで、王様の許しを得て、一匹の犬をもらいました。

その後、旅にでた王子はナハリン国にたどり着き、その国の王女と結婚します。とろこが、ついに運命が王子に追いつく日がやってきます。

本書はエジプトのパピルスに記されていた物語だそうです。結末は散逸してしまっていたので、作者が想像をして、つけ加えています。絵は、さまざまな浮き彫りから引用したもので成り立っており、巻末には詳しい解説がついています。当時のエジプトの雰囲気がよくでている、美しい読物絵本です。小学校中学年向き。