「エルシー・ピドックゆめでなわとびをする」(エリナー・ファージョン/作 シャーロット・ヴォーク/絵 石井桃子/訳 岩波書店 2004)
エルシー・ピドックは生まれついてのなわとび上手でした。エルシーが7つになったころ、その噂はケーバーン山にすむ妖精たちの耳にも届きました。なわとび師匠のアンディ・スパンディに弟子入りしたエルシーは、月に一度、三日月の晩、夢のなかで起き上がり、眠ったままあらゆる秘術を教わりました。そして、1年たつと、もう人間にも妖精にも肩をならべる者のない、なわとび名人になりました。
さて、それから長い年月がたち──。あるとき、性悪な領主があらわれて、ケーバーン山に工場を建てるのだと、村人を立入禁止にしてしまいます。そこで、なわとび名人の女の子、エレン・モルトマンが山で泣いていると、枯れた木の葉のような声が聞こえてきます。「心配ごとは、とんではねとばしてしまわなければいけない」。そこで、エレンが事情を説明すると、声は、「領主のところにいって、こうつたえるのだよ」といいます。「ケーバーン山でなわとびをしたことのある者は、ひとり残らず順番になわとびをさせるように。そして、最後のひとりがとび終えたら、工場のレンガを積みはじめてもよいと」
エレンは、声の主のいうことを村人につたえ、村人はそのとおりに書類をつくり、領主に判を押させます。そして、三日月の晩、ケーバーン山には村人や妖精たちがあつまり、最後のなわとび大会が開催されます──。
ファージョンのお話に、シャーロット・ヴォーグが絵をつけた絵本です。さっと描かれたような、ヴォーグの絵が素晴らしいです。また、絵と文章の配置がじつによく考えられています。読みはじめたらやめられず、また読んだあとは深い感銘をおぼえる、傑作読物絵本です。
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