2013年3月6日水曜日

アローハンと羊















「アローハンと羊」(興安/作 蓮見治雄/文・解 こぐま社 2007)

モンゴルのひとびとは、草のよいところ、水の豊かなところ、雪や風のあたらないところをもとめて、四季それぞれの牧地に移動しながら暮らしています。春の牧地で暮らしていたアローハンは、ある日の夕方、いつものようにヒツジの群れを追って家に帰りました。その途中、さっきまでお腹が大きく、ゆっくり歩いていたヒツジが、いまはお腹がへこんでいるのに気がつきました。「きっとどこかで子どもを産んで、おいてきてしまったんだわ」。このままでは、子ヒツジは死んでしまいます。アローハンは、すぐ子ヒツジをさがしにいきました。

アローハンは、みつけた子ヒツジをふところに入れ、ゲルに連れて帰ります。ミルクを飲ませ、「愛しいもの」という意味の、「ホンゴル」と名づけます。アローハンとホンゴルは、まるで姉妹のように育ち、ホンゴルはいつでもどこでも、アローハンのあとをついていくようになります。

モンゴルを舞台にした絵本です。カラーと白黒の絵が交互にあらわれる構成。絵は、水墨画の手法でえがかれています。さて、大きくなったアローハンは、結婚し、夫の家へと旅立ちます。花嫁の行列には、ホンゴルも加わります。アローハンがさびしがらないように、父さんがホンゴルと子ヒツジたちをアローハンに贈ってくれたのです。アローハンは夫とともによくはたらき、子どもも生まれ、家畜も増えていきますが、あるとき大吹雪がきて──。
巻末の解説によれば、深いきずなで結ばれ、殺すことなど絶対できない家畜に対し、モンゴルのひとたちは、「神様や仏様にお供えする」という名目で、「セテル」という印をつけ、殺さないことにしたということです。アローハンがホンゴルの首につけた赤いひもがその「セテル」です。大きな空と草原がえがかれた、美しい一冊です。小学校高学年向き。

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