2013年3月13日水曜日

きこりとあひる


















「きこりとあひる」(クリスティナ・トゥルスカ/作 遠藤育枝/訳 佑学社 1979)

昔むかし、ポーランドの山のなかに、バーテクという若者が暮らしていました。バーテクは大変貧しい若者で、家族といえば、一羽のアヒルだけでした。バーテクはこのアヒルをとても可愛がり、アヒルの好きなえさのために、森のなかを何時間もさがしまわったり、あっちの池こっちの池を歩きまわったりしました。そして、水草やコケを大きなザルに入れてもち帰りました。

ある日、バーテクがいつものように、アヒルのえさをさがしに池にでかけると、途中、だれかに呼びとめられます。みると、野バラの枝のすきまに一匹のカエルがはまりこみ、うごけなくなっています。「ザルに入れて、池まで連れていってくださらんか。わしはカエルの王じゃ。助けてくれれば、たっぷりと礼はいたしますぞ」と、カエルがいうので、「別にお礼なんぞはけっこうですよ」と、バーテクはカエルを池に連れていきます──。

ポーランドの民話をもとにした絵本でしょうか。絵は、ヨーロッパの昔話によくあったもの。このあと、助けてもらったカエルはバーテクに、魔法のメロディをさずけます。「このメロディを口笛で吹きさえすれば、みるみる大風が吹き、どしゃぶりの雨は大水となって、どんな高い建物もひと流しじゃ」。さて、カエルと別れたバーテクは、軍隊の行列と出くわします。このあたりで一番の屋敷に案内せい、と隊長にいわれるのですが、そんな屋敷はありません。そこで、自分の小屋に案内すると、隊長はバーテクのアヒルを夕飯にするといいだして──。絵もお話も、なんとも味わい深い一冊です。小学校中学年向き。

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