2011年7月19日火曜日

カンガルーには、なぜふくろがあるのか












「カンガルーには、なぜふくろがあるのか」(ジェームズ・ヴァンス・マーシャル/再話 フランシス・ファイアブレイス/絵 百々佑利子/訳 岩波書店 2011)

はるか昔、ドリームタイム(夢の時代)に、いのちのつくりぬしは、哺乳動物、魚、鳥という3種類の動物をつくりました。そのとき、つかわなかった材料が少しずつ残っているのに気づき、それらの材料をつかって動物をつくり、カモノハシと名づけました。最初、哺乳動物と魚と鳥は、仲良く幸せに暮らしていました。ところが、しばらくすると、どの動物たちも自分が一番上等で、えらい生きものだと思うようになり、いいあらそいやけんかをはじめました。

さて、動物たちはそれぞれカモノハシのところにやってきて、仲間になるようにいっていきます。カモノハシは考えて考えて考えますが、どんなに考えても、どの仲間に入ったらよいか決められません。待ちくたびれた動物たちが、池のほとりにあるカモノハシの住まいの前にあつまり、それぞれ仲間に入るように呼びかけると、夕方、涼しくなったころ、やっとカモノハシが姿をあらわします──。

本書は、オーストラリアの先住民アボリジナルの物語を10話おさめた読物絵本です。目次から、10話のタイトルを引用しておきましょう。

「虹色の大ヘビが大地をつくったはなし」
「カンガルーには、なぜふくろがあるのか」
「カエルはなぜぐわっぐわっとなくだけか」
「ブロルガは、なぜおどるのか」
「カモノハシは、なぜとくべつな生きものか」
「山のバラ」
「2ひきのガと、山の花ざかり」
「クロコダイルは、なぜウロコをもつようになったか」
「トカゲ男と、ウルルの誕生」
「ちょうちょうと、死ぬことのなぞ」

さらに、巻末に3つの解説がついています。

「オーストラリア先住民アボリジナル」
「ことばの解説 オーストラリアの動物や植物ほか」
「アボリジナルの絵に使われる記号」

オーストラリアの先住民は、通常「アボリジニ」と呼ばれていますが、解説によれば、いまでは先住民自身の希望と意見をとりいれて、「アボリジナル」(先住の人たち)という呼びかたがつかわれているそうです。再話者のジェームズ・ヴァンス・マーシャルは「美しき冒険旅行」(清流出版 2004)の作者として高名です。絵を描いたフランシス・ファイアブレスは、アボリジナルのヨータ・ヨータ部族出身ということです。冒頭の紹介文は「カモノハシは、なぜとくべつな生きものか」から。動物たちにたいするカモノハシの、考えに考えたすえの返答が胸を打ちます。小学校高学年向き。

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