2011年7月4日月曜日

川はよみがえる ナシア川の物語










「川はよみがえる ナシア川の物語」(リン・チェリー/作 みらいなな/訳 童話屋 1996)

はるか昔、大木の生い茂る森をぬって、一本の川がゆうゆうと流れていました。7千年ほどまえ、採集狩猟の旅を続けている一団がやってきて、この川のほとりに住むことにしました。リーダーのウィアワは、この川をナシャウェイ(川底に小石の光る川)、ナシア川と名づけました。

ナシアのひとたちは、何世代も幸せな暮らしをいとなんでいきますが、17世紀ごろから白人たちがやってきます。かれらは森を切り開き、粉所や製材所の動力としてつかうために川をせきとめます。ナシアのひとたちは土地を奪われ、流域にできた工場の廃棄物により、ナシア川は汚れた、きたない川になってしまいます──。

アメリカのマサチューセッツ州にある、ナシア川についての実話をもとにした絵本です。見開きの左ページに文章があり、右ページに絵があるという構成です。文章のページは、その時代時代の生活用具をえがいた、いくつもの絵によってかこまれています。物語はこのあと、ウィアワが現代のナシア川をみて涙をこぼし、するとその涙が落ちたところから水がきれいになる、という夢をみたウィアワの子孫オウィアさんが、やはり同じ夢をみたという友人のマリオンさんとともに、ナシア川をもとの清流にもどすという運動をはじめて──と続きます。しかし、運動について触れられるのは全体の3分の1ほどで、物語の中心はあくまでナシア川流域の変遷にあります。淡々とした記述と、豊富なディティールが、逆に、現状を変える必要があることを教えてくれます。小学校高学年向き。

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