「くわずにょうぼう」(田和子/再話 赤羽末吉/画 福音館書店 1980)
昔、うんと欲張りの男が山に仕事にいったとき、「よくはたらいて、飯を食わない女房がほしいもんだ」といいました。晩になって、家に帰ろうとすると、だれかがあとをついてきました。「だれだおまえは?」「おらは飯を食わないおなごだ。飯はちょっとも食わないで、うんとはたらくから、あんたの女房にしてくんろ」。みれば、美しい娘で、男は喜んで娘を女房にしました。
男の女房になった娘は、たしかに飯は食わないし、よくはたらきます。ところが、ある日、蔵を開けてみると、米俵がごっそり減ってしまっています。そこで明くる日、男は、「おらは山へいってくる。帰りは遅くなるからな」と女房に告げ、でかけるふりをして天井に隠れて様子をうかがいます──。
欲張り男の滑稽さと、鬼婆の怖さが印象的な、日本の昔話をもとにした絵本です。「絵本よもやま話」(赤羽末吉 偕成社 1979)によれば、絵を描いた赤羽末吉さんは、再話者の稲田さんから、こんな希望をだされたそうです。
・おなご──農村の男が、普通一般に考えている健康的美人。だが、どこかこの世のものでない異様な雰囲気をもっていて、しかし、それが表面にでないように。
・場所──関東以北。
・その他──全体にはでな絵でなく、しかし、最後のしょうぶの花が咲いているところは、光琳の「かきつばた」的雰囲気。そのしょうぶは、しょうぶ自身に心があるように、自分の意志で刀にかわったという感じがほしい。
大変むつかしい注文ですが、赤羽さんは、「私はこの希望にたいへん納得がいった」と応じます。赤羽さんがどう腕を振るったのか、ぜひ実物をたしかめてみてください。小学校低学年向き。
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