「なんてこったい」(やまのうちきよこ/ぶん あさのたけじ/え 福武書店 1982)
ある日、男が山の木を切りにでかけると、どこからか苦しそうな声が聞こえてきました。声は、大きな岩の下から聞こえてきます。男は木を切り倒し、岩のそばまで引きずっていくと、木の先を岩の下に突っこんで、もう片方の先にぶらさがりました。すると、岩がぐらりとうごいて、その下からぬうっと竜があらわれました。
岩の下からでてきた竜は、「ここに百年とじこめられて腹ぺこだ」と、男を食べようとします。「助けたおれを食うだって。なんてこったい、そりゃひどいよ」と、男がいうと、「世の中ってのはそんなものさ」と、竜はこたえます。そのとき、たまたま通りがかった犬や馬やキツネに、男は「世の中ってのはひどいことばかりじゃないよな」とたずねます──。
ノルウェーの昔話をもとにした絵本です。竜に食べられそうになったと思いきや、通りがかった動物たちに、「世の中ってひどいことばかりじゃないよな」と同意をもとめる展開に、なんとも可笑しみがあります。しかも、動物たちはみんな「世の中はうまいぐあいにはいかない」とこたえるのです。
話はこれでは終わりません。キツネのミッケルの助けにより危機を脱した男は、ひと晩ミッケルをニワトリ小屋に泊めてやります。その晩ミッケルはたらふくニワトリを食べるのですが…と、物語は途中から、ミッケルの話になって続きます。絵は、ストーリーと同様に、おおらかで力強いもの。原話はもっと長い話だということですが、絵本化にさいし、絵にあわせて刈りこんだと、カバー袖で山内さんは記しています(ちなみに、元の話は「ノルウェーの昔話」(福音館書店 2003)に「世の中のお返しなんて似たようなもの」というタイトルで収録されています)。小学校低学年向き。
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