2011年1月27日木曜日

ジブヤとひとくいドラ

「ジブヤとひとくいドラ」(A.ラマチャンドラン/作 きざきまろい/訳 福武書店 1982)

ジャングルにかこまれたインドの村に、風のように馬を走らせ、だれよりも矢を射るのがうまい、ジブヤという男が住んでいました。年老いたかしらが世を去り、ジブヤが新しいかしらになったある晩、村に大きな人食いドラがあらわれました。人間の味を知ったトラは、何度も襲ってくるにちがいありません。「おかしらならば、おれたちを守ってくれ」と、村人からいわれたジブヤは、弓矢をとり、馬に飛び乗っていいました。「わたしはこれから旅にでる。人食いドラを倒すまでもどらぬつもりだ」

旅にでたジブヤは、大きな雄牛を倒し、その角で角笛をつくります。田んぼにいき、呪文をとなえてその角笛を吹くと、大蛇があらわれます。大蛇から助言を得たジブヤは、5つの丘に立つ木から、5本の矢をつくり、人食いドラにいどみます。

インドにつたわる勇者ジブヤについての絵本です。ジブヤが人食いドラを倒すまでの出来事が、不思議に満ちた雰囲気のなか語られます。5つの丘には、それぞれ主がいるのですが、ジブヤはうまく主をだし抜き、矢を手に入れていきます。エピソードは豊富で、かつ彩りに富んでいます。

カバー袖にある文章によれば、本書はウォルリ族の美術作品、「ジブヤ・ソマ・マセ」にヒントを得てつくられたそうです。絵も、おそらくウォルリ族のものを模したのではないかと思われます。その絵は、勇者の物語としては、大変抽象的ですが、お話の面白さがそれを大いに補っています。小学校低学年向き。

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