2010年12月1日水曜日

にげろ!にげろ?












「にげろ!にげろ?」(ジャン・ソーンヒル/作 青山南/訳 光村教育図書 2008)

ヤシの木とマンゴーの森に、若いノウサギが住んでいました。ノウサギは、いつも心配ばかりしていました。食べるものがなくなったらどうしようとか、雨が降ったらどうしようとか。ある日、お気に入りの木陰で昼寝をしようとしたノウサギは、このときも怖いことを考えてしまいました。「もしも、世界がこわれたら、わたしは一体どうなるんだろう」。そのとき、真っ赤に熟れたマンゴーの実が、がさがさしたヤシの葉に落っこちました。「大変、世界がこわれはじめた」。ノウサギはぴょんと跳び上がると、ヤシの木とマンゴーの森のなかを必死で走りはじめました。

ノウサギは、花をかじっていた別のノウサギに、なぜ走っているのかと訊かれます。「世界がこわれはじめたのよ! あんたも逃げないと」。すると、そのノウサギも走りだします。噂はどんどん広がって、しまいにはノウサギの数は1000匹に。噂はさらに広がって、1000頭ものイノシシや、シカや、トラや、サイが、いっせいに走りだします。が、その群れのまえにライオンがあらわれます──。

インドにつたわるジャータカのお話を絵本にしたもの。このあと、群れを止めたライオンは、ほんとうに世界がこわれようとしているのか、昼寝の場所を、ノウサギと一緒に確かめにいきます。絵は、色の濃い、よく描きこまれた遠目の効くもの。総勢5千頭もの動物たちが走っていくシーンは圧巻です。巻末には、登場した動物たちについての解説がついています。小学校低学年向き。

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