2010年12月13日月曜日

王さまと九人のきょうだい












「王さまと九人のきょうだい」(君島久子/訳 赤羽末吉/絵 岩波書店 1978)

昔、イ族のある村に、年寄りの夫婦が住んでいました。ふたりはいつも、「子どもがほしい、子どもがほしい」と思っていましたが、すっかり腰が曲がっても、まだ子どもは生まれません。ある日のこと、おばあさんはあんまりさびしいので、裏の池のほとりで涙がこぼれて、ぽとーんと池のなかに落ちました。すると、池のなかから白い髪の老人があらわれて、「なぜ泣くのじゃ」とやさしくたずねました。おばあさんがわけを話すと、老人は黒い丸薬をおばあさんに渡しました。「ひと粒飲むと、子どもがひとり生まれる。九つあるから、みんなで九人の子持ちになるわけじゃ」

おばあさんはさっそくその薬をひと粒飲みます。が、1年待っても赤ん坊は生まれません。待ちきれなくなって、あるだけの薬をいっぺんに飲んでしまうと、まもなくお腹がふくらんで、ある日9人の赤ん坊が生まれます。でも、2人はひどい貧乏なので、とても9人の赤ん坊を育てることはできません。2人が涙をこぼしていると、またあの老人があらわれてこういいます。「心配はいらん。なんにもしてやらなくとも、この子たちはひとりで立派に育つのだ」。そして、老人は子どもたちに、「ちからもち」「くいしんぼう」「はらいっぱい」「ぶってくれ」「ながすね」「さむがりや」「あつがりや」「きってくれ」「みずくぐり」という名前をつけます──。

中国の民話をもとにした絵本です。ここまでが冒頭。このあと話は一転し、王様がだす難題を兄弟たちが解決していくという話に続きます。九人の兄弟が、無理難題を次ぎつぎに乗り越えていくさまが大変痛快です。文章はタテ書き。文章、絵ともに素晴らしい読物絵本です。小学校低学年向き。

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