2010年12月14日火曜日

アイウエ王とカキクケ公












「アイウエ王とカキクケ公」(武井武雄/原案 三芳悌吉/作 童心社 1982)

昔、アイウエ王という王様が治める、アイウエ王国という国がありました。王様はやさしく、ひとびとははたらき者の、平和で豊かな国でした。アイウエ王国のとなりには、カキクケ公国という国がありました。その国は、カキクケ公という欲の深い公爵が治めており、いつかとなりのアイウエ王国に攻め入ってやろうと狙ってしました。また、アイウエ王国には、サシスセ僧という徳の高いお坊様がいました。動物たちまでが、サシスセ僧を慕ってあつまってきました。

さて、ある日のこと、カキクケ公はアイウエ王を狩りに誘いました。カキクケ公は家来を待ち伏せさせておいた森にアイウエ王を誘いこみ、王を捕らえ、タチツテ塔という気味の悪い塔に閉じこめてしまいました。そして、アイウエ王国は、カキクケ公の軍隊に占領されてしまいました――。

原案は武井武雄の「アイウエ王物語」。ダジャレでいっぱいの物語ですが、格調高い絵により、叙事詩のような風格があります。あとがきによれば、絵を描くにあたって、ノルマン制服を描いたバイユーの「タペストリーの絵物語」と、「ペリー公の絵暦」の「ポール・ド・リンデンブルグ」「ジャン・コローム」を参考にしたということです。

また、三芳悌吉さんは、故郷の活動写真館(映画館)で、日本語の上手な外国の老人が、「アイウエ王様」という物語を面白おかしく聞かせてくれたことをおぼえているそうです。その話は、じつは武井武雄の童話をもとにしたものでした。いつかこの話を絵本にしたいと思っていた三芳さんは、武井武雄の承諾を得て、この絵本をつくったとのこと。絵本の冒頭と終わりに、タキシードを着た老人が舞台にあらわれますが、これは活動写真館での思い出をえがいたのでしょう。小学校中学年向き。

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