「栄光への大飛行」(アリス・プロヴェンセン/作 マーティン・プロヴェンセン/作 今江祥智/訳 BL出版 2009)
時は1901年、ところはフランスの町カンブレ。新しい車で家族とドライブにでかけたルイ・ブレリオさんは、空からクラケッタ、クラケッタという音がするのを耳にしました。おかげで、前をみるのをすっかり忘れ、荷馬車と衝突。そのとき、頭上に飛行船があらわれました。クラケッタ、クラケッタという音は、飛行船がだしていた音だったのです。飛行船を目にしたブレリオさんは、うちじゅうのみんなにいいました。「わしも空飛ぶ機械をつくるぞ。大きな白い鳥のようなのをな」。
まず、ブレリオがつくったのは、鳥のようにはばたく模型、ブレリオⅠ号でした。そのつぎは、モーターボートで引っ張って飛ぶ、グライダーのブレリオⅡ号。でも、ブレリオⅡ号はすぐ墜落してしまいます。そのつぎは、モーターとプロペラをつけたブレリオⅢ号。ブレリオⅢ号は、どうしても水面をはなれようとしません。プロペラとモーターを2つに増やしたブレリオⅣ号は、水の上にきれいな輪をえがいただけに終わります。ブレリオⅤ号は地面をぴょんぴょん跳ね、ブレリオⅥ号は原っぱのはしからはしまで飛んだものの、岩にぶつかってしまいます。でも、ついに、ブレリオはブレリオⅦ号で空を飛びます。
飛行機黎明期の偉大な先駆者、ルイ・ブレリオについての絵本です。巻末の文章によれば、自動車のライトについての発明で財をなしたブレリオは、それを飛行機の開発につぎこんだということです。本書は空を飛んだだけでは終わりません。ブレリオは、史上初の英仏海峡横断に挑戦します。そのあたりの文章はこんな風です。
「海峡のはばは 20海里あります。
黒い波が うねっています。
霧がたちこめ、雨がふります。
おっこちたら、氷のような 水の中です。
岸につくには、うんと 泳がなくてはなりません。
どうかんがえても 危険です。
つまり、パパの好みにぴったりなのです。」
絵は、落ち着いた色づかいの水彩。何度失敗してもめげない不屈のブレリオが大変印象的な一冊です。小学校中学年向き。
本書は、以前、「パパの大飛行」(脇明子/訳 福音館書店 1986)というタイトルでも出版されています。脇さんの訳のほうが好みだったので、紹介文は「パパの大飛行」にもとづきました。引用箇所は、「栄光への大飛行」の今江訳ではこんな風になっています。
「海峡の幅は20海里もあり、
まっくろな波がうねり、
霧がたちこめ雨がふる。
落ちれば氷の水浴びになる。
岸に泳ぎつくのはおおごとで、
いやはや、危険がいっぱいだ。
それこそまさに――パパが望むところ。」
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