2010年12月9日木曜日

しょうとのおにたいじ












「しょうとのおにたいじ」(稲田和子/文 川端健生/絵 福音館書店 2010)

昔、けものや小鳥がまだものをしゃべっていたころのこと、しょうと(ホオジロ)というかわいい小鳥が、お地蔵さんの耳に巣をつくらせてもらい、3つの卵を生みました。そうして、「かわいや、かわいや」と毎日抱いていましたが、ある日、はたらきにでなくてはならなくなり、お地蔵さんに留守守りを頼みました。ところが、しょうとが飛んでいったすきに、山から大きな赤鬼がきて、卵をちょっと見せてくれと、お地蔵さんにいいました。はじめのうち、お地蔵さんは断っていましたが、見るだけだというので、ちょっと見せると、赤鬼は卵をひとつさらって飲み、たあっと逃げていきました。

このあと、青鬼と黒鬼(いずれも赤鬼が化けたもの)がやってきて、卵はぜんぶ食べられてしまいます。しょうとは悲しみのあまり、歌もうたわず、飛ぶこともせず、泣きの涙で暮らすのですが、ある日どんぐりがやってきてこういいます。「わが子をとられるほどつらいことがあろうか。しかし、力を落とすなよ。一緒に鬼退治にいこう」。鬼は大きいし、強い。こっちが負けるにきまっとる。そういうしょうとを、どんぐりは励まします。「いやいや、しょうとどん。小さいもんは頭をつかわにゃ。知恵で鬼のやつをごいーんとやっつけようじゃないか」。かくして、鬼退治にでかけたしょうととどんぐりは、途中出会ったカニ、クマンバチ、牛、臼、縄を仲間にし、みごと鬼退治にむかいます。

作者の稲田さんが、広島県で採話した話をもとに絵本にした一冊です。一見、桃太郎とサルカニ合戦をくっつけたような話ですが、「こどものとも」(1996年2月号 479号)として刊行されたときの折りこみふろく「絵本のたのしみ」によれば、「しょうと」のほうが古いと稲田さんはみています。また、川端健生さんが絵を描いた絵本は、この一冊のみだということです。方言を生かした文章と、ととのった日本画による、いうことのない一冊です。小学校低学年向き。

0 件のコメント:

コメントを投稿