2011年8月11日木曜日

アラヤト山の女神

「アラヤト山の女神」(ヴィルヒリオ S.アルマリオ/再話 アルベルト E.ガモス/絵 あおきひさこ/訳 ほるぷ出版 1982)

フィリピンのルソン島に、アラヤト山という美しい山がありました。昔、このアラヤト山をおさめていたのは、マリア・シヌクァンという女神でした。マリア・シヌクァンは慈しみ深い、公平な女神として知られていたので、ひとびとや動物たちは、なにか困ったことがあると、アラヤト山の上にある女神の法廷にやってきました。

ある日、ムクドリのマルティネスが泣きながら女神のもとにやってきます。「女神さま、きのうの夜のことです。馬のカバーヨが突然走りだして、わたしの巣を踏みつぶしてしまったのです」。それを聞いたマリア・シヌクァンは、馬のカバーヨを呼んで事情を聞いてみると──。

フィリピンの民話をもとにした絵本です。このあと、「カエルのパラカーが大声で叫んだので、びっくりして走りだしたのです」という、馬のカバーヨの話を聞いた女神は、今度はカエルのパラカーを呼んで話を聞きます。こんな具合に、女神は、カメのパゴン、ホタルのアリタップタップ、蚊のラモックから事情を聞くことになります。物語はたんにムクドリの巣がこわれた原因をさぐるだけではありません。なぜ、蚊は耳元でぶんぶんいうのかといった、それぞれの動物の特徴にたいする由来譚ともなっています。絵は、おそらく色鉛筆でえがかれたもの。南国風の、色彩の濃い、美しい絵柄が魅力的です。西アフリカの民話をもとにした、同じ題材をあつかった絵本、「どうしてカはみみのそばでぶんぶんいうの?」(ヴェルナ・アールデマ/文 レオ・ディロン/絵 ダイアン・ディロン/絵 やぎたよしこ/訳 ほるぷ出版 1976)と読みくらべるのも面白いでしょう。小学校中学年向き。

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