2010年11月5日金曜日

おとうさんの庭












「おとうさんの庭」(ポール・フライシュマン/文 バグラム・イバトゥリーン/絵 藤本朝巳/訳 岩波書店 2006)

昔、あるところにひとりの農夫がいました。農夫は、ヒヨコや子ブタや子牛が育っていくのをなによりの楽しみにしていました。農夫には3人の息子がいて、3人は一日中うたいながらはたらいていました。長男は御者の歌が、次男は海の歌が、末っ子は旅のバイオリン弾きの歌がお気に入りでした。

ある春のこと、日照りが何週間も続き、動物たちにやるえさも、親子が食べる小麦もなくなってしまいました。農夫は仕方がなく動物たちを売り払い、農場まで売り払って、生け垣にかこまれたちっぽけな小屋に移り住みました。やがて、待ちにまった雨が降りだしましたが、動物たちはもういないし、買いもどすお金もなかったので、農夫の心は深い悲しみにつつまれていました。

さて、刃物を研ぐ仕事をして、どうにか暮らしを立てていた農夫は、ある日、生け垣を刈りこもうとしたところ、それが牛のかたちに見えることに気がつきます。そこで、農夫は生け垣を、牛や羊やオンドリやブタやヤギのかたちに刈りこんでいきます。月日は流れ、長男が、「ぼくはどんな仕事をしたらいいでしょうか」とたずねると、農夫は生け垣を短く刈りこんでこういいます。「毎日、しっかり見なさい。よく観察することだ。生け垣はきっとおまえに答えをだしてくれるよ」。何週間も生け垣を見てすごした長男は、ある朝「わかったぞ!」と叫ぶと、生け垣を馬と馬車の姿に刈りこみ、御者になるために家をでていきます。

生け垣によって、心の願いを教えられる親子のお話です。このあと、次男は船乗りに、末っ子はバイオリン弾きになるために旅立ちます。そして、願い通りの仕事について帰ってきた子どもたちは、お父さんの願いに気がつきます。

作者のポール・フライシュマンは高名な児童文学作家。板にえがかれたトールペイントのような絵は、18・19世紀のアメリカの民俗芸術家たちの作品に影響を受けて描かれたということです。小学校高学年向き。

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