2009年11月28日土曜日

しちどぎつね












「しちどぎつね」(たじまゆきひこ/作 くもん出版 2008)

大阪の仲のいい2人連れ、喜六(きろく)と清八(せいはち)がお伊勢参りの旅にでてきました。途中お腹がすいた2人は畑のスイカを失敬しますが、まだ季節が早くてなかは真っ白。スイカを草むらに放ると、ちょうどそこに寝ていた狐の頭にごつんと当たりました。このキツネは、ひとに一度仇されたら、7度だまして返すという七度ギツネ。スイカをぶつけられたお返しに、七度ギツネはさっそく2人を化かしにかかりました。

上方落語「七度狐」をもとにした絵本です。落語では、2人は煮物屋(軽食堂)で「いかの木の芽和え」を失敬し、食べ終えたあとすり鉢を投げ捨てたら、それが七度狐に当たります。それが絵本では効果を考えて、スイカに変更されています。この絵本の付録「絵本のたから箱」という冊子には、制作の苦労話が載せられているのですが、それによると、作者がこの落語の絵本化を志してから、スイカを思いつくまで、20年近くたってしまったということです。

独特の味わいのある絵は、型染(かたぞめ)という、大変手間のかかる手法でえがかれたもの。話はおおむねセリフのやりとりで進んでいきますが、セリフのまえには発言者の絵をつけるという工夫がされています。また、ラスト近くに、七度ギツネに化かされた2人が、伊勢音頭をうたい踊るという場面があります。 じつに、落語絵本として出色の出来映えの一冊です。小学校中学年向き。

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