「ものぐさ太郎」(肥田美代子/文 井上洋介/絵 西本鶏介/監修 ポプラ社 2005)
むかし、信濃の国のあたらしの里に、ものぐさ太郎という男が住んでいました。とても立派な屋敷のあるじでしたが、生まれつきの怠け者で、家のなかで暮らすのは面倒だと、門のそばに竹を4本たて、その上にむしろをかぶせただけのみすぼらしい小屋で暮らしていました。ある年、みやこにいる信濃の国司、二条大納言ありすえが、あたらしの里に人手をだすようにいってきました。そこで、村人は太郎をいかせようと相談しました。「みやこへでて仕事をすれば、出世もできるし、美しい嫁をもらうこともできる」「そうか、みやこへいけばよめをもらえるのか、そんならいってみるか」 ものぐさ太郎はだんだんその気になり、都にいくことを承知しました。
ご存じ、ものぐさ太郎の物語です。井上洋介さんの描く、墨絵風の絵が、なんともいえずユーモラス。太郎は不敵な面がまえをしています。文章は、原文を踏まえてわかりやすく書かれています。冒頭をくらべてみましょう。
「物くさ太郎」(「おとぎぞうし(漢字)」所収 市古貞次校注 岩波文庫)
《東山道(とうせんだう)みちのくの末、信濃国十郡のその内に、筑摩(つかま)の郡(こおり)あたらしの郷(がう)といふ所に、不思議の男一人侍(はんべ)りける。其名を物くさ太郎ひぢかすと申し候。ただし名こそ物くさ太郎と申せども、家造りの有様、人にすぐれてめでたくぞ侍りける》
「ものぐさ太郎」
《むかし、信濃の国のあたらしの里に、ものぐさ太郎という名のたいへんかわった男がすんでいた。名前はものぐさ太郎だが、とてもりっぱな屋敷のあるじだった。》
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