「きんいろのしか」(J.アーメド/案 石井桃子/再話 秋野不矩 /絵 福音館書店 1988)
昔、グリスタンと呼ばれた南の国に、ひとりの王様が住んでいました。この王様が世界で一番好きなのは金でした。王様は国中の金を御殿の倉におさめさせ、ほかの者はひとかけらの金もつかってはならないというお触れをだしていました。ある日、家来をつれて森へ狩りにでかけた王様は、木々の影のあいだから、きらりきらりともれる不思議な光をみつけました。それは、からだ中が金色に輝く鹿でした。鹿が大きな木のまわりを踊ると、その足跡は金の砂に変わってあたりに飛び散るのでした。
さて、森のむこうの草原では、ホセンという男の子が牛追いをしていました。森から、王様に追われた鹿があらわれると、ホセンは驚いていいました。「美しい鹿よ、どうしたのだ?」。すると鹿はいいました。「私は追われています。追っ手のひとたちがやってきても、私の行方を話さないでください」。
鹿が去ると、王様の家来たちがやってきて、鹿の行方をたずねました。ホセンがごまかしていると、家来たちはホセンを王様のところに連れていきました。そして、家来から事情を聞いた王様は、火のように怒っていいました。「3日のうちにあの鹿を捕まえてこい。さもなくば、貴様の命はない」。
泣きながら牛やけものたちのところにもどってきたホセンに、けものたちは金色の鹿をさがしだして相談してみることをホセンに勧めます。そこで、ホセンは翌朝、金色の鹿をさがしに旅立ちます。
バングラデシュの昔話をもとにした絵本です。このあと、ホセンはトラやゾウに出会い、金色の鹿の居場所を教わります。秋野不矩さんの絵はみずみずしく、金色の鹿の気高さが印象的にえがかれています。絵もストーリーも気品のある一冊です。小学校中学年向き。
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