「絵本ジャンヌ・ダルク伝」(ジョゼフィーン・プール/文 アンジェラ・バレット/絵 片岡しのぶ/訳 あすなろ書房 2004)
ブーテ・ド・モンヴェルの「ジャンヌ・ダルク」同様、ジャンヌの生涯を絵本にしたものです。「ジャンヌ・ダルク」とくらべると、その生涯はだいぶ簡略化されています。
また、物語の押さえているポイントも、それぞれちがいます。たとえば、オルレアンを包囲していた敵将の名は、ウィリアム・グランデールといい、甲冑をつけたまま川に落ちて溺れ死んだことが「ジャンヌ・ダルク伝」には描かれているのですが、「ジャンヌ・ダルク」ではこのエピソードは触れられていません。
また、ご存じのように、イギリス軍の手に落ちたジャンヌは、異端審問にかけられ、火あぶりの刑に処せられます。「ジャンヌ・ダルク」では、居合わせた者たちは、死刑執行人も裁判官たちもみな泣き、「──しまった、聖女を焼き殺したのだ!」という、イギリス人の叫びをもって、物語を終わらせています。
同じ場面を、「ジャンヌ・ダルク伝」はこんな風に描きます。
「刑を執行したのはイギリス人でした。けれども、最後に小さな木彫りの十字架を作ってジャンヌにわたしたのも、ひとりのイギリス人でした」
うがった見方をすると、この文章は、本書がイギリスで出版されたために記されたのかもしれません。小学校高学年向き。
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