「漁師とおかみさん」(グリム/原作 カトリーン・ブラント/絵 藤本朝巳/訳 平凡社 2004)
昔、あるところに漁師とおかみさんがいました。ある日、漁師がサカナを釣り上げると、そのサカナがいいました。「わたしは魔法をかけられた王子なのです。海にもどしてください」。漁師はサカナを海にもどしてやり、あばら屋に帰っておかみさんに話しました。すると、おかみさんはいいました。「それであんたはなにも願いごとをしなかったのかい! もう一度でかけていって、小さい家を一軒たのんでごらんよ」。そこで漁師は海にいき、おかみさんの願いごとをサカナにつたえました──。
おかみさんの願いごとはかなえられ、ふたりは小さな家に住むことができるようになりました。ところが、こんどは石づくりのお城に住みたいとおかみさんはいいだします。その願いもかなえられますが、おかみさんの欲はとどまることを知りません。どんどんと、途方もなくエスカレートしていきます。
絵は、墨で書いたような線に水彩で着色した親しみやすいもの。だんだんと広がっていく不気味な海が印象的です。字の組みは、いささか窮屈な部分があります。また、欲の皮が突っ張ったおかみさんの姿が、途中からあらわれなくなるという演出がとられています。小学校低学年向き。
余談ですが、チェコのアニメーション作家トルンカの作品「金の魚」では、欲にとりつかれたおかみさんが大変印象的に描かれています。また、すこしひねった児童文学に、ルーマー・ゴッデンの「おすのつぼにすんでいたおばあさん」(徳間書店 2001)があります。
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