2013年4月1日月曜日

虫めづる姫















「虫めづる姫ぎみ」(森山京/文 村上豊/絵 ポプラ社 2003)

ある大納言に、ひとりの姫君がいらっしゃいました。この姫君は大変に変わった方で、なによりも虫が大好きでした。さまざまな虫を小箱にあつめては、「これがどう変わっていくか楽しみだわ」と、その成長ぶりを見守っておいでになりました。

その時代、身分の高い女のひとは、眉毛を抜いて描き眉をつくり、歯にはお歯黒をつけて黒く染めるのが習わしでした。ところが、この姫君は、「お化粧なんていやなことだわ」と、眉も歯もそのままで、鏡をのぞこうともしませんでした。

平安時代後期の短編物語集、「堤中納言物語」におさめられた「虫めづる姫君」をもとにした読物絵本です。文章はタテ書き。村上豊さんは、主人公の姫君を可愛らしく、しかしいかにも頑固そうな顔立ちにえがいています。さて、こんな姫のことを、両親はもちろん心配します。「ひとはだれでも、見た目の美しさを好むものです。気味の悪い毛虫を可愛がるなどと知られてごらんなさい」。ところが、なかなか理屈屋の姫は、こういい返します。「そんなの平気です。ものごとは、原因と結果を見きわめてこそ面白いのです」。こんな姫の噂を聞きつけて、右馬之助という若い公達がいたずら心を起こして──と、物語は続きます。巻末に、西本鶏介さんによる解説がついています。小学校中学年向き。

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