2013年4月25日木曜日

つぼつくりのデイヴ















「つぼつくりのデイヴ」(レイバン・キャリック・ヒル/文 ブライアン・コリアー/絵 さくまゆみこ/訳 光村教育図書 2012)

いまから200年ほど前のアメリカ。奴隷のデイヴは粘土で壷をつくって暮らしていました。たっぷりこねた粘土のかたまりが、次つぎとデイヴの仕事場にはこばれてきます。デイヴは川の水を粘土にそそぎ、ちょうどいい固さになるまで、へらで混ぜます。それから、ろくろを回し、あかぎれのできた親指で、粘土の真ん中をつまみ、壷のかたちをつくっていきます。どんな壷ができあがるのかは、デイヴの頭のなかにしかありません──。

壷ができあがり、乾くのを待つあいだ、デイヴは木の灰と砂を混ぜて釉薬をつくります。そして、壷がすっかり固まる前に、細い枝で壷に文字を書きつけます。

アメリカに実在した壷づくりの奴隷、デイヴについての絵本です。絵は、迫力のあるコラージュ。巻末の「デイヴの人生」という解説によれば、デイヴは自身がつくった壷に詩を書きつけていて、それにより、かれの人生の断片がわかるようになったということです。奴隷という、表現活動が死に結びつく可能性を秘めた境遇のなか、詩を書きつけるのは大変危険なことでした。解説には、デイヴの詩がいくつか載せられています。ひとつ引用してみましょう。

《私の家族はどこなのか?
 すべての人──そして、国に、友情を
      ──1857年8月16日》

大人向き。


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