2013年2月28日木曜日

パオアルのキツネたいじ















「パオアルのキツネたいじ」(蒲松齢/原作 心怡/再話 蔡皋/絵 中由美子/訳 徳間書店 2012)

昔むかし、パオアルという男の子が、お父さんとお母さんと一緒に古い屋敷に暮らしていました。お父さんが泊まりがけででかけたある日の真夜中、ギィーッと、表の戸が開いて、怪しい人影が入りこんできました。翌朝、お母さんは、真っ青な顔をして、なんだかぼんやりし、黒髪を振り乱して、布団のなかで泣いたり笑ったりするようになりました。

「きっとなにかがとりついているんだ。絶対そいつをやっつけてやるぞ」と、パオアルはレンガと漆喰で窓を全部ふさぎます。明かりを消して見張っていると、家のなかから、お母さんが泣いたりわめいたりする声が聞こえてきます。「そこにいるのはだれだ!」と、パオアルが怒鳴ると、家のなかから黒い影がピューッと飛びだし、パオアルは影にむかって包丁を振り下ろし──。

巻末の訳者あとがきによれば、本書は、中国の古典「聊斎志異」中の一篇、「商人の子」(原題:賈児)をもとにしています。蔡皋 (サイ コウ) は、「なみだでくずれた万里の長城」をえがいたひと。絵は、黒と鮮やかな色の対比が美しい水彩。さて、パオアルが包丁を振り下ろした地べたには、キツネの尻尾の先が落ちています。血の跡を追うと、荒れはてた屋敷の庭にたどり着きますが、怪しいものはみつかりません。何日かして、お父さんが帰ってきますが、お母さんはお父さんをみても、まるきり知らないひとだとでもいうように、大声でわめきたてます。あのキツネはまだお母さんにとりついているにちがいないと、パオアルは再び荒れはてた庭に向かいます──。賢くて勇気のある、パオアルの活躍をえがいた一冊です。小学校中学年向き。

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