2013年2月15日金曜日

なんげえはなしっこしかへがな















「なんげえはなしっこしかへがな」(北 彰介/文 太田 大八/絵 銀河社 1979)

《なんげえ はなしっこ しかへがな(話してやろうかな)
 山の中の くりの木さ、なん千なん万って、実っこ なったど。
 そごさ、からすぁ とんできて、ガアって ないだっきゃ(ないたら)、
 くりの実ぁ ひとつ、ポタンって おぢだど。
 まんだ(また)、からすぁ ガアって ないだっぎゃ、
 くりの実ぁ ひとつ、ポタンって おぢだど。》

カラスが鳴くたびにクリは落ちますが、クリは何千何万とあったので、みんな落ちるまで1年と3日かかったということです──。

本書は、青森に生まれた著者が、小さいころ毎晩のようにおばあさんから聞いた「果てなし話」を再話したものとのこと。おばあさんに昔話も何度もせがんでいると、話すのにあきてきたおばあさんは、「そうすればなんげえ話っこだぞ」といって、語りだす──。それが、「果てなし話」といわれる昔話だったそうです。

《「…ガア ポタン。ガア ポタン。ガア ポタン」と、いつまでたっても同じ言葉のくり返しですから、子どもは「まだ終わらねえの」というと、「くりの実ぁ、何千何万もあるんだ。まだ20より落ちてねえんだよ。ガア ポタン…」と続けるもので、「あと、いい」と子どもたちはこたつを飛びだします。それが「果てなし話」のねらいなわけです。》

本書には、引用した冒頭の「くりの実」のほかに、「なぎくらべ」「へび」「くまんばぢ」「かっぱ」「かみなりさまのふんどし」「鬼ばば」の全7話が収録されています。ちなみに、「かっぱ」は、おやじかっぱが、八万八千八百八十八匹の子かっぱに、泳ぎを教えるというもの。子かっぱが、1匹ずつ、ドボンドボンと川に飛びこんでいきます。また、「かみなりさまのふんどし」は、空から落ちてきたフンドシを、畑仕事をしていた田吾作が引っ張るという話。

《かみなりさまの ふんどしぁ、
 なげくて なげくて、
 みんな ふっぱり おわるまで、
 十年ど九十三日 かがったどせ。》

引用したとおり、本書は津軽弁で書かれています。でも、だからといって津軽弁のまねをして読むことはないと、巻末の文章で著者は記しています。

《熊本の人は熊本の、京都の人は京都のアクセントやイントネーションで、この「なんげえはなしっこ」を読んで(語って)やってください。昔話とは、親が子に語ってやる時、なによりも生々と子どものこころへ浸透していくものなのです。》

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