2010年5月20日木曜日

おおきな木












「おおきな木」(シェル・シルヴァスタイン/作 ほんだきんいちろう/訳 篠崎書林 1976)

昔、大きなりんごの木がありました。木は、かわいいちびっこと仲良しでした。ちびっこは、落ちてくる木の葉をあつめたり、冠をつくって王様を気どってみたり、木によじ登ったり、りんごを食べたりしました。ちびっこは木が大好きでしたし、木もちびっこが大好きでした。けれども、時は流れ、ちびっこは大きくなり──。

大人になり、ひさしぶりにやってきたちびっこは木にいいます。「ぼくはもう大きいんだよ。木登りなんておかしくて。買い物がしてみたい。だからお金がほしいんだ。おこづかいをくれるかい」。そこで木は、りんごを町で売ったらどうだろうと提案し、ちびっこは木によじ登って、りんごをみんなもぎとります。「木はそれでうれしかった」。

このあとも、木はちびっこに自分の全てををあたえ続けます。原題は“The Giving Tree”。大人から子どもまで楽しめ、考えさせられる、忘れがたい絵本です。小学校中学年向き。

追記。2010年に、あすなろ書房より、村上春樹訳が出版されました。そこで、ほんだ訳と村上訳をならべてみたいと思います。

ほんだ訳
《むかし りんごのきが あって…

 かわいい
 ちびっこと
 なかよし。

 まいにち
 ちびっこは
 やってきて

 きのはをあつめ

 かんむり
 こしらえて
 もりの おうさま きどり。》

村上訳
《あるところに、いっぽんの木がありました。

 その木は
 ひとりの少年の
 ことが
 だいすきでした。

 少年はまいにち
 その木の下に
 やってきました。

 そして はっぱを いっぱい あつめ ました。

 はっぱで
 かんむりをつくり
 森の王さまになりました。》

「きのはをあつめ」と「そしてはっぱをいっぱいあつめました。」の箇所は、木の葉が落ちるように文字組みがデザインされています。

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