「かしこいビル」(ウィリアム・ニコルソン/作 松岡享子/訳 吉田新一/訳 ペンギン社 1982)
ある日、郵便屋さんがメリーに手紙を届けてくれました。それは、おばさんからの「うちに遊びにいらっしゃい」という、ご招待の手紙でした。さっそく返事を書いたメリーは、おばさんのうちにもっていくものを選びました。芦毛のアップルと、毛皮のついた手袋と、人形のスーザンと、笛と、赤い靴と、ティーポットと、メリーと名前の書いてあるブラシ、それに近衛兵のかしこいビル。メリーは、お父さんにもらったトランクにもっていくものを詰めました。が、なんと、ビルを入れ忘れてしまいました。
忘れられたビルは涙をこぼします。が、すぐに立ち上がり、走って走って、メリーの乗った汽車を追いかけます。
原書の出版は1926年の古典絵本です。巻末には、松岡享子、吉田新一両氏による、懇切な解説がついています。それによると、本書は作者が自分の娘のためにつくった絵本で、登場するおもちゃも、すべて現実のメリーのものだそうです。
「絵本全体にあふれている親密な感じや暖かさ、くつろいだ伸びやかさは、このように、父と幼い娘が、ふたりの知りつくしている世界で、共に物語をたのしんでいることからきているのでしょう」
一直線に進む、躍動感あふれるストーリーは、いまでも読むに値します。小学校低学年向き。
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