2012年11月11日日曜日

もじゃもじゃペーター












「もじゃもじゃペーター」(ハインリッヒ・ホフマン/作 ささきたづこ/訳 ほるぷ出版 1985)

ハインリッヒ・ホフマンによる歴史的な絵本です。巻末に、その由来が載せられていますので、引用してみます。

《もともと開業医として、診察時にむずかる子をなぐさめるために、お話をしたり絵を描いて見せたりするのが得意だったホフマンは、1844年のクリスマスの一週間ほど前、3歳になる息子に贈る適当な絵本を本屋で見つけることができなかったので、かわりに1冊のノートを買ってきて、自分で絵を描き、詩をそえて絵本をつくった。それが出版者カール・F・レーニングの眼にとまり、「もじゃもじゃペーター」を含む6編の話からなる初版が1845年に出版されるやいなや、1ヶ月のうちに1500部を売りつくす大評判をおさめた》

ところで、本書は、「ぼうぼうあたま」(教育出版センター)というタイトルでも出版されました。初版は1936年、第3版は1992年。巻末に記された文章によれば、新版編集者の財団法人五倫文庫というのは、千葉県御宿町の町立博物館のなかにある文庫なのだそう。で、なぜ、この文庫が編集者として名をつらねているのか。この文庫の設立は1892年。当時の御宿村立尋常高等小学校の校長、伊藤鬼一郎が、毎年使用される教科書を保存したことによりはじまったのだといいます。収集は次第に、台湾、朝鮮、中国へと広がり、息子の伊藤庸二がドイツに留学すると、ドイツの教科書も加わります。そして、この伊藤庸二が、甥のために「ぼうぼうあたま」を翻訳して送ったのが、そもそものはじまり。のちに、長男の誕生記念として出版したのが、本書の初版だということです。

物語風の詩と素朴な絵とから成った本書は、ナンセンスで、いささか残酷で、教訓的で、リズミカル。表題となっている「もじゃもじゃペーター」と「ぼうぼうあたま」を引用してみましょう。

「もじゃもじゃペーター」
《ごらんよ ここにいる このこを
 うへえ! もじゃもじゃペーターだ
 りょうての つめは 1ねんも
 きらせないから のびほうだい
 かみにも くしを いれさせない
 うへえ! と だれもが さけんでる
 きたない もじゃもじゃペーターだ!》

「ぼうぼうあたま」
《ちょっと ごらん
 この こども
 ちぇっ!
 ストルーベルペーターめ
 りょうほ の おてて に
 ながい つめ
 いちねん にねん も
      きらせない
 かみ も ぼうぼう
      きらせない
 ちぇっ!
  きたない ペーターめ》

この2冊は、つかわれている絵も、レイアウトもちがうのですが、印刷のぎつい「ぼうぼうあたま」よりも、稚拙な味わいのある「もじゃもじゃペーター」のほう絵が、よりオリジナル版であるようです。また、「もじゃもじゃペーター」は右ページにだけ印刷がされています。「もじゃもじゃペーター」の、カバー袖の文章によれば、ホフマンは、自分の描いた絵が、きれいに修整されたりしないように、職人たちをきびしく監督したということです。小学校中学年向き

0 件のコメント:

コメントを投稿