2012年9月11日火曜日

おにのここづな








「おにのここづな」(さねとうあきら/文 かたやまけん/絵 教育画劇 2000)

昔、あるところに、うめという美しい娘がいました。あるとき、たきぎ拾いにでたきり、うちにもどらなかったので、「おらあ、うめがみつかるまでもどらねえから」と、お父は山に入っていきました。それから、長いあいだ山のなかをさがし歩き、とうとう海がみえるあたりまできたとき、川のほとりに見覚えのある着物が干してあるのに気がつきました。ものかげにかくれて様子をみていると、岩屋の奥からひとりの女がでてきました。

女はうめで、お父はたまらず飛び出します。うめは、大鬼にさらわれてここに連れてこられたといいます。岩屋には、うめの息子のこづながいて、「もうじき父ちゃんの大鬼がもどってくる。声をだすと食われちまうから静かにしてろ」と、おじいを大きな長持ちのなかにかくします──。

「日本の民話絵本」シリーズの一冊です。絵は、色づかいの美しい、水気の多い水彩。このあと、大鬼が帰ってきて「人間くせえ」といいだします。「おらに赤ん坊ができただけだ」と、うめがウソをつくと、大鬼は、それはめでたいといって仲間をあつめ、宴会をはじめます。そのあいだ、こづなは長持ちの上にすわって、おじいを守り通します。そして、宴会が終わったあと、3人は海から船で逃げだそうとするのですが…とお話は続きます。笑話めいた場面があったり、最後は蚊の由来譚となったりと、内容は盛りだくさん。賢くて勇気のあるこづなが印象的な一冊です。小学校低学年向き。

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