2012年9月6日木曜日

くずのはやまのきつね









「くずのはやまのきつね」(大友康夫/文 西村繁男/絵 福音館書店 2009)

昔、葛の葉山のふもとに、小さな村がありました。あるとき、何年もコメがとれないことがあり、村びとたちはコメの代わりにアワやヒエを、それもなくなると草や木の根を食べていました。村には、たみぞうとごさくという兄弟がいて、寝たきりのじいさまが「昔は、葛の葉山のキツネが嫁入りをする年は、コメがいっぱいとれたもんだが」といったので、2人は、嫁入りを頼もうと、毎日キツネをさがしに山に入りました。

さて、山に入ったたみぞうとごさくは、ある夜、とうとうキツネに出会います。キツネたちは集会をしていて、年寄りキツネが「来年の秋に、わしの孫娘が嫁入りすることになった。いまからしたくにとりかかってくれ」というのを耳にします。2人はさっそく村の大人たちにそれを知らせるのですが、「こんなに遅くまでほっつき歩いて」と、大人たちに怒られてしまいます──。

絵は情景がよくえがかれた水彩。このあと、春になり農村の一年がはじまります。今年こそたくさんのコメがとれるようにと思いながら、村人たちははたらきます。そして、秋になり、コメが実ると、そこに嵐がやってきて…と、お話は続きます。キツネの嫁入りが、豊作と関係があるのかないのか、いまひとつわからないというえがきかたが絶妙です。また、最後にあらわれるキツネの嫁入りには、思わず息をのみます。小学校低学年向き。

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