2010年7月15日木曜日

つばさをもらった月

「つばさをもらった月」(八百板洋子/文 南塚直子/絵 ほるぷ出版 1993)

昔、おじいさんとおばあさんがいました。子どもがいなかったのがさびしくて、毎晩、毎晩、「どうか娘をさずけてください」と、お月さまにお願いしました。ある朝、おじいさんが暗いうちに川へいき、魚とりのかごを沈めて川辺でうとうとしていると、かごのなかに一羽のカモが入っていました。それは、金色のくちばしに、銀色の足をしたカモでした。2人はカモを自分たちの子どもにすることにしました。

さて、2人がきのことりにでかけ、帰ってくると、驚いたことに部屋は片づき、夕ごはんの支度はしてあり、シャツは縫ってありました。次の日も同じことが続いたので、不思議に思った2人はでかけるふりをして屋根にのぼり、煙突から部屋をのぞきました。すると、カモが美しい娘になって部屋の片づけをはじめました。2人は、娘がまたカモになっては困ると思い、カモの翼を暖炉に投げこみました。

ところが、娘はじつは月の化身でした。娘は、天の岩戸のように岩かげに隠れてしまい、夜、月は空にのぼらなくなってしまいます。そこで、おじいさんとおばあさんは、娘を天に帰すため、娘にいわれたとおり、森じゅうの鳥の羽を1本ずつあつめ、魔法使いのおばあさんにカモの翼をつくってもらいます…。

あとがきによれば、本書は、アンゲル・カラリーティフの「ブルガリア民話集」におさめられた話を絵本にしたものです。ブルガリアでは、一般に「おじいさんと月の話」という名前で語り継がれているそうです。 話はロシアの民話「かもむすめ」に似ていますが、スケールはずっと大きくなっています。絵は、可愛らしく幻想的。夜空に、ふたたび月がのぼった場面が印象的です。小学校低学年向き。

なお、本書と同じ八百板洋子さんの編訳による、ブルガリアの昔話集「吸血鬼の花よめ」(福音館書店 1996)にも同じ話が収録されています。絵本のほうが、話が短くなっているのは、文章を刈りこんだせいかもしれません。

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