2010年8月5日木曜日

生命の樹












「生命の樹」(ピーター・シス/作 原田勝/訳 徳間書店 2005)

副題は、「チャールズ・ダーウィンの生涯」。「ダーウィン」と同じく、ダーウィンの生涯を絵本にしたものです。押さえている伝記的事実のポイントは「ダーウィン」とほとんど変わりありませんが、表現の仕方はまるでちがいます。オーソドックスな「ダーウィン」に対し、「生命の樹」は絵も文章もずいぶん散らかっていて、その散らかり具合が魅力的です。この絵本の魅力は細部にあり、いったん手にとって読みはじめるとなかなかやめることができません。

また、「ダーウィン」とちがうところは、ビーグル号の航海が、精緻な絵とともに詳しくえがかれているところです。航海から帰ってきたダーウィンの生活を、本書では、「公(おおやけ)の生活」「私生活」「秘密の生活」の3つに分けています。「秘密の生活」とは、もちろん進化論についての思索のこと。最後に、この本から末尾にあるダーウィンのことばを引用しましょう。

《たとえ自分ではどんなに気に入っている仮説でも(しかも、わたしはあらゆる問題について仮説をたてずにはいられないのだが)、それに反する事実が明らかになれば、すぐにその仮説をすてられるよう、つねに心を自由にしておく努力を重ねてきた》

2004年ボローニャ国際児童図書展ノンフィクション大賞受賞。小学校中学年向き

0 件のコメント:

コメントを投稿