2011年5月6日金曜日

すばらしいとき












「すばらしいとき」(R.マックロスキー/作 わたなべしげお/訳 福音館書店 1992)

メイン州ペノブスコット湾の入江に浮かぶ小島に住む、作者の暮らしから生まれた絵本です。文章は2人の娘に語りかけるように書かれています。

〈早朝のきりの朝、なぎさにたつと、
 まるで、なにもない世界のはしに、
 ひとりぼっちでたっているように 感ずるだろ。
 すると、なにもない世界から、
 しゅうっ しゅうっ という音が きこえてくる。
 ひとりぼっちじゃない。いるかのかぞくが ちかくにいる。
 アクロバットのように 身をひるがえし、
 海のなかの にしんを たべている。朝ごはんだよ。〉

季節は春から夏へ──。

〈島のちっちゃなみさきの岩は 年をへた岩だ。
 地球が若かったとき、岩は、火のように
 あつかった。おしつぶすような重さで
 氷河が 地球をおおったとき、岩は
 氷のように つめたかった。
 けさ、岩は、太陽にてらされて
 あたたかい。そして、あそびにきた
 子どもたちの うれしそうな声で
 にぎやかだ。〉

クライマックスは嵐の場面です。本土へいって食料とガソリンを大急ぎで買いこみ、手こぎボートを水ぎわから、ずっとはなれたところに引っ張り上げます。たき木をはこび、発電機にガソリンをいっぱい入れ、台所の棚に食料品をのせます。すると、静かに風が吹きはじめ、雨が降りはじめます。そして、嵐がすぎ去ると、大きな木が道をふさいで倒れています。

〈あるきなれた小道や 林の道を、きょうは
 あるけないけれど、たおれた巨人のような
 木のこずえを さぐったり、これまで
 だれもあるかなかった みきや枝の上を
 あるけるんだ。〉

絵は、透明感のある、めりはりの効いた水彩。美しい絵と文章によってつくられた、素晴らしい一冊です。1957年度コールデコット賞受賞。大人向き。

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