2011年4月5日火曜日

雪の写真家ベントレー












「雪の写真家ベントレー」(ジャクリーン・ブリッグズ・マーティン/作 メアリー・アゼアリアン/絵 千葉茂樹/訳 BL出版 1999)

昔、ある農村にウィリーという男の子がいました。ウィリーはなによりも雪が好きでした。チョウやリンゴの花もきれいだけれど、雪の美しさは、どんなものにもけっして負けない。ウィリーはそう思っていました。母さんから古い顕微鏡をもらったウィリーは、ほかの子たちが、雪合戦をしたり、カラスめがけて雪玉を投げて遊んでいるとき、ひとりで雪の結晶を観察していました。

ウィリーは雪の結晶の美しさを、なんとかみんなに知ってもらいたいと考えます。そこで、まずスケッチをしてみましたが、雪はスケッチが出来上がるまえに溶けてしまいます。ウィリーが17歳のとき、お父さんとお母さんは顕微鏡つきカメラを買ってくれます。それは、子牛よりも背が高く、10頭の乳牛よりも値段の高いカメラでした。はじめのうち、うまく写真を撮ることができませんでしたが、次の年の冬、ウィリーはついに雪の結晶の写真を撮ることに成功します──。

生涯を雪の研究と、結晶の撮影にささげた、アマチュア研究家ウィルソン(ウィリー)・ベントレーについての伝記絵本です。ウィリーは1865年2月9日、アメリカのバーモンド州ジェリコに生まれました。ジェリコは豪雪地帯にある小さな農村だそうです。カバー袖にある訳者の文章には、こんなことも書かれています。

〈「雪は天から送られた手紙である」という有名なことばを残した、雪の世界的権威、中谷宇吉郎博士が研究をはじめたのも、ベントレーが出版した雪の結晶の写真集を目にして、その美しさに目をみはったことがきっかけでした。〉

絵は着色された版画。巻末に、ウィリーが撮った美しい雪の結晶の写真が載せられています。ウィリーのひたむきな生涯が心に残る一冊です。1999年度コールデコット賞受賞。小学校高学年向き。

0 件のコメント:

コメントを投稿