2012年12月27日木曜日

ねずみのとうさんアナトール












「ねずみのとうさんアナトール」(イブ・タイタス/文 ポール・ガルドン/絵 晴海耕平/訳 童話館 1995)

アナトールは、パリ近くの小さなネズミ村に、愛する妻のドーセットと6人の可愛い子どもたちと一緒に暮らしていました。毎日、夕闇がせまると、アナトールたちはパリに通じる大通りを自転車で走りました。そして、人間の家に入りこみ、残りものを頂戴しました。ある夜、入りこんだ家で、アナトールは人間たちがこんなことをいうのを耳にしました。「なんていやらしいネズミだこと!」「やつらはフランスの恥だ。生まれつき悪なんだ」

人間の言葉にショックを受けたアナトールは、友人のガストンに、「人間がぼくたちのことをあんな風にみているとは夢にも思わなかった」ともらします。ガストンは「おれたちだって家族を食べさせねばならないんだぜ」と、こたえますが、アナトールは割り切れません。「軽蔑され、嫌われていると思うとたえられない。ぼくの自尊心はどうなるの? ぼくの誇りは? ぼくの名誉は?」

アナトールが、なぜフランで一番幸せなネズミなのかを語ったお話です。ポール・ガルトンは、「まほうのなべ」などの作者。本書は、白黒と3色のページが交互にあらわれる構成になっています。さて、このあと、「人間になにかお返しができればいいんだけど」という、妻のドーセットの言葉にヒントを得て、アナトールはタイプライターでカードをつくり、夜、デュバルチーズ工場へ忍びこみます──。本の最初と最後が、フランス国旗を模した、洒落たつくりになっています。小学校中学年向き。

0 件のコメント:

コメントを投稿