2012年10月15日月曜日

のらねこボタン












「のらねこボタン」(トム・ロビンソン/文 ペギー・ベイコン/絵 光吉夏弥/訳 大日本図書 1988)

オスネコは、路地の奥のそのまた奥の、石炭がらを入れる灰入れの缶のなかで生まれました。生まれて6週間目にやっと目が開きましたが、まだうまく歩くことができません。でも、転がることはできたので、灰入れの缶から転がりでました。そして、食べられるものならなんでも食べて、夜はまた灰入れの缶によじ登って眠りました。

オスネコはだんだん大きく強くなります。耳はちぎれ、顔はひっかかれ、尻尾は折れという姿になりますが、オスネコはいまや路地の王様になり──。

カバー袖の、「作者と作品について」によれば、作者のトム・ロビンソンは建築家で、友人と開いた建築事務所にあらわれたのが、この野良ネコだったそうです。1ページごとに絵があり、絵の下に文章があるといった構成で、黒一色の絵は、おそらくパステルかコンテでえがかれたもの。ネコのしぐさや特徴などが、素晴らしい実在感でえがかれています。さて、路地の王様となったオスネコですが、このあと、別のネコを追いかけて木に登り、そこから降りられなくなってしまいます。消防自動車が助けにきたのをみたオスネコは、近くの窓に飛びこみ、その家の地下室にあった灰入れの缶でひと眠りするのですが、じきその家の家族にみつかって──と、お話は続きます。「のらねこボタン」というタイトルは、家の女の子がオスネコにつけた名前からきています。とても読みやすい、読物絵本です。小学校低学年向き。

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