2012年5月18日金曜日

道草いっぱい











「道草いっぱい」(八島太郎/文・絵 八島光/文・絵 マコ岩松/訳 創風社 1998)

小学校からの帰り道、たくさんのものが私たちを待ちうけていました。村の中心部にいく途中には、桶屋さんが住んでいました。桶屋さんは、水桶、めし櫃(ひつ)、たらい、漬物桶などをつくっていました。少しいくと、染物屋さんがありました。仕事をしていないときでも腕が紺色だったので、みんなかれのことを「紺さん」と呼んでいました。村の真ん中には、砂糖と小麦粉の香りに満ちたお菓子屋さんがありました。

お菓子屋さんの向かいには、年とった親方と若い弟子たちがはたらいている畳屋さんがあり、そのとなりにはちょうちん屋さんがあります。それから、看板屋さんがあり、豆腐屋さんがあります。私たちは、看板屋さんを国一番の絵描きだと思っています。なぜなら、有名な画家はみんな死んでしまっていますが、看板屋さんは生きているからです──。

作者の八島太郎は「からすたろう」の作者として高名です。アメリカに移り住んだ作者は、郷愁に満ちた作品を残しましたが、本書もその一冊に当たります。子どもたちは、村を通らず、山道を通って帰るときもあり、そのときは、樟脳工場や、水車小屋や、鍛冶屋さんをのぞいていきます。家に着くのはいつも夕食前。最後はこう締めくくられます。「私たちは帰り道で、大人になるためのさまざまなことを学ぶことができました」。訳者のマコ岩松は、八島太郎の息子さんで、アメリカで東洋人俳優として活躍しています。生硬な訳文は、独特の味わいがあります。小学校中学年向き。

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