2011年10月28日金曜日

神の道化師












「神の道化師」(トミー・デ・パオラ/作 ゆあさふみえ/訳 ほるぷ出版 1980)

昔、イタリアのソレントに、ジョバンニという小さな男の子が住んでいました。ジョバンニには、お父さんもお母さんもいませんでした。でも、なんでも空中に投げ上げて、お手玉のようにくるくる上手にまわすことができたので、いつも八百屋のパプチスタさんの店先で、得意の芸をみせました。町のひとたちは、ジョバンニの技をみにあつまってきて、終わると、店で買い物をしました。そして、ジョバンニは、パプチスタのおかみさんから、熱いスープをごちそうになるのでした。

ある日、町に旅芝居の一座がやってきます。その舞台をみて、あれこそぼくにぴったりの暮らしだと思ったジョバンニは、親方に芸をみせ、一座の一員にしてもらいます。ほどなく、道化師の格好をして舞台に立つようになったジョバンニは、しだいに名を知られるようになり、旅芝居の仲間と別れて、国中を旅するようになります。

イタリアの民話をもとにした絵本です。同じくこの民話をもとに、アナトール・フランスが「聖母の曲芸師」という短編を書いていることが思い出されます(「詩人のナプキン」(堀口大学/訳 筑摩書房 1992)収録)。このあと、歳月はすぎ、年老いて芸の腕がすっかりおとろえたジョバンニは、子どものころのようにパンをめぐんでもらいながら、故郷のソレントに帰ります。聖フランシスコ教会の修道院にもぐりこみ、眠っていると、やがてひとびとの歌声で目をさまします。その日はちょうどクリスマス・イヴで、ひとびとはイエスさまにささげものをもってきたのです。その夜、ささげるものがなにもないジョバンニは、イエスの像をよろこばせるために、一世一代の芸を披露します──。おそらく、作者の代表作と思われる一冊です。小学校中学年向き。

1 件のコメント:

  1. 小学1年生の息子が、学校の図書室で借りてきました。長文なので私が読み聞かせをしたのですが、読み終わって思わず涙してしまいました。私はクリスチャンではありませんが、何かとても不思議な感覚に感動しました。絵のタッチや色彩も素敵で、眺めるだけでも良いと思います。

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