2010年5月14日金曜日

おおきなかぬー









「おおきなかぬー」(大塚勇三/再話 土方久功/画 福音館書店 2005)

遠い南の島にラタという若者がいました。あるとき、ラタのお父さんが亡くなってしまいました。そこで、ラタはお父さんの亡きがらをはこぶために、だれもみたことがないような立派なカヌーをつくろうと思いました。ラタは森へいき、どの木よりもずっと高くまっすぐにそびえ立つ木をみつけると、その木を石斧で切り倒しました。

ところが、その晩、一番大事な木が切られたことに腹を立てた森の精たちは、森じゅうの生きものをあつめて、木を元通りに立て直します。以下はくり返しです。倒しても、倒しても木が元にもどるのは森の精のしわざにちがいないと思い、夜通し見張りをしたラタは、何百何千という鳥や虫たちが木を元通りにするさまを目の当たりにします。

木を元通りにするとき鳥たちがうたう歌は、こんな歌です。
《こっぱよ きくずよ とんでこい
 どんどん くっつけ しっかり くっつけ
 すばらしい きよ さあ たちあがれ》

森のなかで、鳥たちの合唱が聞こえてくるような絵本です。小学校低学年向き。

2010年5月13日木曜日

エドワルド せかいでいちばんおぞましいおとこのこ












「エドワルド せかいでいちばんおぞましいおとこのこ」(ジョン・バーニンガム/作 千葉茂樹/訳 ほるぷ出版 2006)

エドワルドはどこにでもいる普通の男の子です。でも、ときどきものをけっとばすと、大人にこういわれます。「乱暴者のエドワルド、おまえはいつでもけっとばしてる。世界中のだれよりも乱暴者のエドワルド」 すると、エドワルドはますます乱暴に。

小さい子に意地悪すると、「世界中のだれよりも意地悪」。
猫をみつけて追いかけると、「世界中のだれよりも野蛮」。
部屋を散らかしていると、「世界中のだれよりもだらしない」。
ついにはみんなに、「世界中のだれよりもおぞましい子どもじゃないか!」

ところが、ある日、エドワルドがけっとばした植木鉢が、柔らかい地面に着地すると、こういわれます。「なるほど、花壇をつくるんだね。素晴らしいじゃないか」。花を育てるのがうまかったエドワルドは、みんなに呼ばれて庭の手入れを頼まれるように──。

本書はエセー風の絵本。つぎからつぎへと、いろんなな例を挙げていきます。後半は、前半と同じことをしても、すべてうまくいくようになるのですが、ずいぶん強引にうまくいかせるところもあって、そこが笑いを誘います。また、数々の例を挙げたのちの結論にはほれぼれします。小学校低学年向き。

2010年5月12日水曜日

でもすきだよ、おばあちゃん












「でもすきだよ、おばあちゃん」(スー・ローソン/文 キャロライン・マガール/絵 柳田邦男/訳 講談社 2006)

ソフィーのおばあちゃんは、ショートケーキをつくるのが上手です。でも、ぼくのおばあちゃんはケーキをつくれません。マイケルのおばあちゃんは、ピエロの鼻みたいに真っ赤な口紅を塗っています。でも、ぼくのおばあちゃんは、自分で口紅を塗ることはできません──。

右のページに、よそのおばあちゃんについて描かれ、ページをめくると、「でも、ぼくのおばあちゃんは…できない」と続く構成です。〈ぼく〉の描写だけを追うと、ベッドから起き上がり、外にでて、花を摘んで、歩いていくといった、一連の姿がえがかれます。

絵は、達者な筆づかいで描かれた水彩画。おばあちゃんたちの顔が大変魅力的です。また、〈ぼく〉の歩いている後ろ姿が印象に残ります。重いテーマをよく昇華した一冊です。小学校高学年向き。

2010年5月11日火曜日

うえにはなあにしたにはなあに









「うえにはなあにしたにはなあに」(ローラ M.シェーファー/文 バーバラ バッシュ/絵 木坂涼/訳 福音館書店 2008)

本書は、タテにして読む絵本。
「もぐらの頭の上にはなにがある?」
ページをめくると──「土がある」。
根っこの上には草があり、「草の上にはなにがある?」
ページをめくると──「ぴょーんとはねてる足がある」。

どんどん上にいって、ついにはお月さままで。すると、こんどは本をひっくり返して、「月の下にはなにがある?」と、下へ下へと続きます。

たんに、上には(下には)なにがあるのか並べただけでなく、カエルがヘビから逃げているところなど、ドラマチックな展開があるのが楽しいです。絵は、おそらくパステルで描かれたもの。タテ長の画面を生かした、臨場感のある絵が魅力的です。お話会向けの一冊といえるでしょう。小学校低学年向き。

2010年5月10日月曜日

おだんごぱん

「おだんごぱん」(プラートフ/再話 エフゲーニ・M・ラチョフ/絵 遠藤のりこ/訳 らくだ出版 1975)

同じ「おだんごぱん」でも、こちらはラチョフが絵を描いたもの。「らくだ世界の絵本シリーズ ソ連編」の第4巻です。本書には、「おおきなかぶ」「おだんごぱん」「おひゃくしょうとくま」「ババヤガーのおばけどり」の4編が収録されています。「ババヤガーのおばけどり」は「ババヤガーのしろいとり」として知られているお話です。

ちなみに、「おだんごぱん」の歌はこんな風になっています。

「ぼくは おだんご おだんごぱん
こやのなかを はきよせて
はこのすみを ほじくって
すっぱいミルクで こねられて
ペチカのなかに いれられて
まどのところで さまされた
おじいさんから にげだした
おばあさんから にげだした
だから うさぎのきみからも
にげるのなんか わけはない」

やはり、瀬田貞二さんのことばづかいが、抜きんでているといえるでしょうか。

2010年5月7日金曜日

ころころパンケーキ












「ころころパンケーキ」(アスビヨルンセン/文 モー/文 スヴェン=オットー/絵 やまのうちきよこ/訳 偕成社 1983)

おなかがすいた7人の子どもたちのために、母さんがパンケーキを焼きました。お行儀よく待っている子どもたちに、お母さんは、「まっててね、いまひっくり返るから」といいました。お母さんは、「ひっくり返す」といおうとして、間違えてしまったのです。これを聞いたパンケーキは、「えっ、ぼくが自分でひっくり返るんだって?」と驚きましたが、ためしに跳ねてみると、うまくひっくり返って、裏返しにフライパンの上に落ちることができました。そこで、こんどはフライパンのそとにでて、ころころ転がって、家の外にでていきました。

ノルウェーの昔話です。話は、ご存じロシアの昔話「おだんごぱん」によく似ています。パンケーキは、おかみさんと、7人の子どもと、おじいさんと、だんなと、メンドリと、オンドリと、カモと、ガチョウから逃げだしますが、最後はブタに…。

絵は水彩の、折り目正しいもの。絵を描いたオットーは、デンマークのひとですが、この絵本を描くためにノルウェーを訪れたということです。小学校低学年向き。

2010年5月6日木曜日

おだんごぱん












「おだんごぱん」(瀬田貞二/訳 脇田和/画 福音館書店 1989)

昔むかし、なにかおいしいものを食べたくなったおじいさんが、おばあさんに、おだんごぱんをつくってくれないかといいました。「うちには小麦粉がありませんわ」と、おばあさんがいうと、「粉箱をごしごしひっかいて、粉をあつめりゃどっさりあるさ」と、おじいさんがこたえました。そこで、おばあさんは粉箱をごしごしかいて、粉をあつめて、おだんごぱんをつくりました。そして、おだんごぱんをかまどからだし、窓のところにおいて、冷やしておきました。ところが、おだんごぱんはじっとしているうちにさみしくなって、転がって、家の外にでてしまいました。

このあと、おだんごぱんは、ウサギやオオカミやクマに出会い、食べられそうになりますが、どの相手からもうまく逃げだします。が、最後に出会ったキツネに──。

ロシアの昔話を絵本にしたものです。逃げだすとき、おだんごぱんはこんな歌をうたいます。

「ぼくは、てんかの おだんごぱん。
ぼくは、こなばこ ごしごし かいて、
あつめて とって、それに クリーム 
たっぷり まぜて、バターで やいて、
それから、まどで ひやされた。
けれども ぼくは、おじいさんからも、
おばあさんからも、にげだしたのさ。
おまえなんかに つかまるかい」

くり返しが楽しい、お話会の定番絵本のひとつです。小学校低学年向き。

以下は余談。松居直さんの講演録を読んでいたら、丸谷才一さんの「日本語のために」(新潮社 1974)という本で、瀬田貞二訳「おだんごぱん」が大いにほめられていると書かれていました。そこで、図書館で取り寄せで読んでみたところ、その文章、「最初の文体」によれば、丸谷さんが読んだのは、井上洋介さんが絵を描いた「こどものとも」(1960年2月号)で、読んであげた息子さんともども大変気に入り、何度も読んだあげく新しい本を買い直したそうです。瀬田貞二訳を引用したのち、丸谷さんはこう褒めちぎっています。

「どうです、いい文章でしょう。力がこもっていて、言葉がいちいち生きている。もたもたした余計な言葉はちっともないし、すっきりと歯切れがいい。お団子パンの歌う短い自叙伝が、委曲をつくしているくせに頭によくはいり、じつに威勢がいいけれど、いかにもこの子供(?)の子供っぽさをうまい具合にとらえているあたりを味わって下さい」

丸谷さんは、お子さんに絵本を買ってあげると、文章のあまりにひどいところは直してから読んであげていたそうです。でも、「おだんごぱん」だけは、朱を入れる必要がまったくなかったとのこと。「こどものとも」200号までのうち、丸谷さんが唸ったのは、「おだんごぱん」ただ一冊でした。さらに、丸谷さんは、なにもあらゆる絵本の文章が名文でなければならないといっているのではない、と断ってこう続けています。

「わたしは、子供に与える文章というのはぜったい、上手下手はともかくとして、生きのいい、生気にみちた、文章でなければならないと思っている」