2010年9月10日金曜日

とらとほしがき












「とらとほしがき」(パクジェヒョン/再話・絵 おおたけきよみ/訳 光村教育図書 2006)

昔むかし、山奥のそのまた奥に、一匹の大きなトラがすんでいました。ある日、お腹がすいたトラは、山のふもとに降りていき、小さな家に入っていきました。トラが牛に近づくと、家のなかから、お母さんが泣いている赤ちゃんをあやす声が聞こえてきました。お母さんが、オオカミがくるわよといっても、クマがくるわよといっても、ぼうやは泣きやみません。トラがくるわよといっても泣きやまないので、「このわしが少しも怖くないようだぞ」と、トラはたいそうがっかりしました。ところが、お母さんが干し柿を差しだすと、赤ん坊はぴたっと泣きやみました。

赤ん坊が泣きやんだということは、干し柿はわしより強くて恐ろしいやつにちがいない。急いで山に帰らなくてはと、トラが思ったそのとき、忍びこんでいた泥棒が、牛と勘違いして、トラの背に飛びのります。「アイゴアイゴ! 干し柿がわしの背中にのぼったようだ。わしはもうおしまいなのか」と、トラは泥棒を振り落とそうと走りだして──。

日本の昔話「ふるやのもり」や、ベンガルの昔話「たまごからうま」によく似たお話です。巻末の訳者あとがきによれば、このタイプのお話は、インドの説教説話集「パンチャタントラ」にさかのぼることができるということです。また、干し柿は日本だけでなく、韓国や中国でも昔から食べられていたそうです。また、カバー袖には、「アイゴ」という言葉についての説明が、こんな風になされています。

「アイゴとは、びっくりしたきもちや かなしいきもち、おもわず でてしまう さけびや つぶやきを あらわす、かんこくのことばです」

絵は厚塗り風のもの。いささか間の抜けたトラがユーモラスに描かれています。小学校低学年向き。

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