2010年10月13日水曜日

パンはころころ

「パンはころころ」(マーシャ・ブラウン/作 やぎたよしこ/訳 富山房 1994)

昔、おじいさんとおばあさんがいました。ある日、おじいさんが、「なあ、ばあさんやわしにパンをつくっておくれ」といいました。うちには粉がないんですと、おばあさんがいうと、おじいさんは、「こね鉢の底ひっかいて、粉箱の底はいてみな。粉はたっぷりとれるとも」といいました。そこで、おばあさんは、めんどりの羽でこね鉢の底をひっかき、粉箱の底をはいて、粉をふたつかみ手に入れると、パンを焼き上げ、窓辺でさましておきました。

おだんごぱん」の類本の一冊です。このあと、窓辺でおとなしくしていたパンは、突然ころころ転がりだし、広い世間へでていき、ノウサギやオオカミやクマやキツネと出会います。パンのうたう歌は、この本ではこんな感じです。

「こねばちの そこ ひっかいて、
 こなばこの そこ はいたらば、
 こなが とれたよ、ふたつかみ。
 その こな こねて、
 クリーム まぜて、
 こんがり やいて、
 まどの ところで さまして できた、
 それが この ぼく、パンさまだ。
 ぼくは ふたりも だましたよ。
 おばあさんから ひらりと にげて、
 おじいさんから するりと にげて、
 あんたからだって にげだすよ。
 にげだしちゃうよ、のうさぎさん!」

小学校低学年向き。

2010年10月8日金曜日

よるのおるすばん










「よるのおるすばん」(マーティン・ワッデル/文 パトリック・ベンソン/絵 山口文生/訳 評論社 1996)

フーにポーにピヨという3羽のフクロウのヒナが、お母さんと一緒に木の幹のほら穴に住んでいました。ある夜、目をさますとお母さんがいません。3羽は、「きっと狩りにいったのよ」「ごはん、とってきてくれるんだ」「ママに会いたいよう!」といいながら、ほら穴をでて、木の枝にとまってお母さんの帰りを待つことにしました。

お母さんはなかなか帰ってこないので、フクロウのヒナたちの不安はつのります。夜の森の雰囲気とあいまって、ヒナたちの心細さがひしひしとつたわってきます。ヒナたちは写実的ですが、しぐさなどは可愛らしく描かれています。ラスト、お母さんが帰ってくる場面では、だれもが安堵の息を吐くことでしょう。小学校低学年向き。

2010年10月7日木曜日

魔女たちのパーティ








「魔女たちのパーティ」(ロンゾ・アンダーソン/作 エイドリアン・アダムズ/絵 奥田継夫/訳 佑学社 1987)

変装をしたファラディは、わくわくしながらアーティチョークで開かれるハロウィン・パーティにでかけました。その途中、魔女の影がふたつ、月を横切るのをみかけました。ファラディはぞーっとしましたが、魔女たちを追って、森の奥深くに入りこんでいきました。

森のなかの広場では、魔女たちがパーティの準備をしており、小鬼たちや大鬼たちもあつまってきます。その様子を、ファラディはかくれてみていましたが、大鬼のオットーにみつかってしまいます──。

ハロウィンを題材にした絵本です。このあと、なんとか助かったファラディは、親切な小鬼のお母さんや魔女に助けられ、ぶじハロウィン・パーティにたどり着きます。ちょっと怖いのですが、同時にユーモアもたっぷりあります。絵は濃いめの水彩。色づかいは渋く、鮮やかです。ハロウィンを題材にした絵本のなかでも、代表的な一冊といえるでしょう。小学校中学年向き。

2010年10月6日水曜日

わらのうし












「わらのうし」(内田莉莎子/文 ワレンチン・ゴルディチューク/絵 福音館書店 1998)

あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。それはそれは貧乏で、おじいさんはタールをつくり、おばあさんは糸をつむいでやっとのことで暮らしていました。ある日のこと、突然おばあさんがいいました。「おじいさん、わらで牛をつくっとくれ。横っ腹にタールをぬっとくれ」。おじいさんは文句をいいながらも、わらの牛をつくり、横っ腹にたっぷりタールをぬりました。翌朝、わらの牛をつれて丘にのぼったおばあさんは、糸をつむぎながら居眠りをはじめました。すると、暗い深い森の奥からクマがやってきました──。

イヌに腹を食いちぎられたクマは、わらの牛にタールをよせといいますが、わら牛はこたえません。腹を立てたクマは、わらの牛のタールをはぎとろうとしますが、逆にくっついてしまいます。そこへ、目をさましたおばあさんがおじいさんを呼び、クマは捕まってしまいます。

その後はくり返し。次はオオカミ、その次はキツネがわらの牛に捕まってしまいます。おじいさんは捕まえた3匹を逃がしてやり、3匹はおじいさんたちにいろいろなものをもってきます。

ウクライナの昔話を元にした絵本です。大きな絵本で、タテ29センチ、横31センチもあります。絵を描いたのもウクライナのひとで、その国のひとでなければ描けないような味わいがあります。内田さんの再話は、まったく無駄のない素晴らしいもの。カバーの袖に内田さんの写真が載せられています。小学校低学年向き。

2010年10月5日火曜日

ないしょのおともだち











「ないしょのおともだち」(ビバリー・ドノフリオ/文 バーバラ・マクリントック/絵 福本友美子/訳 ほるぷ出版 2009)

昔、とても大きな家にマリーという女の子が住んでいました。この家のすみには、ネズミの女の子が住んでいました。ある晩、マリーは夕飯のあとかたづけをしていて、フォークを落としました。ちょうど同じとき、ネズミの女の子も夕飯のあとかたづけをしていて、スプーンを落としました。マリーは、フォークを拾おうとしてネズミの女の子に気づき、ネズミの女の子はスプーンを拾おうとしてマリーに気づきました。

こうして内緒のお友だちになった二人は、毎晩フォークとスプーンを落として挨拶をかわします。大きくなった二人はそれぞれ家をでて、ひとり立ちするのですが、娘の代になってまたつきあいがはじまります。

母娘二代に渡る、女の子とネズミの交流をえがいた可愛らしい絵本です。細部までよく考えられた絵は、見応え充分。ひとり暮らしをはじめた女の子とネズミの部屋に、たがいの絵が貼ってあるところなど、見ていてうれしくなります。文章もきびきびして、何度も楽しめる絵本になっています。小学校低学年向き。

2010年10月4日月曜日

ロバのおうじ












「ロバのおうじ」(M.ジーン・クレイグ/再話 バーバラ・クーニー/絵 もきかずこ/訳 ほるぷ出版 1979)

昔、広くて平和な国を治めている王様とお妃さまがいました。王様はなによりも自分の財産が好きで、ひまさえあれば金蔵にこもって、銀ののべ棒や金貨やルビーや真珠を数えてすごしました。お妃さまはなによりもきれいなお召しものが好きで、ひまさえあれば鏡のまえでドレスを着替えてすごしました。ふたりには子どもがいなかったのですが、ある日旅人から、どんな願いもたちどころかなえてくれる魔法使いの話を聞きました。そこで、王様とお妃さまは馬に乗り、大きな森の洞穴に住む魔法使いを訪ねました。

さて、王様とお妃さまの話を聞いた魔法使いは、代金として金貨のつまった袋を3つ要求します。ところが、王様は支払いにまがいものの金貨を混ぜ、それに気づいた魔法使いは、お妃さまにロバそっくりの子どもが生まれるよう呪文をかけます。

グリム童話の「ロバのおうじ」を元にした絵本です。王子は立派に成長しますが、ロバの姿のため、だれにも愛されることがありません。そこで、王子はリュートをひとつたずさえて旅にでます。絵は、おそらくパステルと水彩でえがかれたもの。クーニーはここでも素晴らしい仕事をしています。透明感があり、親しみやすく、簡潔ながらよく空間を表現し、物語を語って過不足のない、大変美しい絵がみられます。小学校低学年向き。

2010年10月1日金曜日

鳥少年マイケル

「鳥少年マイケル」(トミー・デ・パオラ/作 ゆあさふみえ/訳 ほるぷ出版 1983)

鳥少年のマイケルは静かな田舎に暮らしていました。マイケルは毎日目をさますと、顔を洗い、鳥のかたちの服を着て、朝ごはんを食べ、一日の仕事をして暮らしていました。毎日、空の様子は変わり、季節はめぐり、木の葉の色は変わっていきました。

ところが、ある日どこからか黒い雲が流れてきて、空一面に広がり、花はしおれ、夜がきても月も星もみえなくなってしまいました。そこで、マイケルは荷物をまとめると、この黒い雲がどこからくるのか突きとめにでかけました。

町にたどり着いたマイケルは、〈空とぶクツ〉印の特製はちみつシロップ工場から黒い煙がでているのをみつけます。工場のもち主、ボス・レディに話をすると、ボス・レディはこたえます。「お砂糖をあのでっかい炉で溶かすときに、黒い煙がでちゃうのね」。そこで、マイケルはボス・レディに本物のはちみつをつくることをすすめます。

自然の大切さを説いた絵本です。こういう話はうるさくなりがちですが、この絵本はそうなっていません。ボス・レディの素直さのおかげです。小学校中学年向き。