2013年6月11日火曜日

7日だけのローリー















「7日だけのローリー」(片山健/作 学研マーケティング 2007)

ある朝、家の前にみたことのないイヌがいました。お父さんとぼくは、だれかこのイヌを知っているひとがいないか、イヌを連れて家の周りをまわってみました。でも、知っているひとはいませんでした。

〈ぼく〉のうちで一週間、イヌの世話をすることになります。一週間たっても飼い主があらわれなければ、保健所に連れていきます。イヌは、通るひとにみえるように、うちの前にある空き家の軒下を借りて、そこにつないでおきます。近所のひとたちが、インターネットで知らせたり、ポスターをつくってあちこちに貼ったりしてくれます――。

7日間だけ迷子イヌの世話をすることになった男の子のお話です。片山健さんは、「タンゲくん」や「むぎばたけ」などをえがいたひと。にじみを生かした、それでいてにごりのない、にぎやかな水彩をえがきます。さて、イヌの世話をはじめて3日目、〈ぼく〉は散歩の途中、女のひとにイヌの名前を訊かれて黙ってしまいます。そこで、お母さんと相談し、ローリーという、お母さんの好きな歌手の名前を内緒でつけることにします。でも、4日たっても、5日たっても飼い主はあらわれず――と、お話は続きます。小学校低学年向き。

2013年6月10日月曜日

しあわせハンス















「しあわせハンス」(グリム/原作 フェリクス・ホフマン/絵 せたていじ/訳 福音館書店 1978)

奉公して7年がたったハンスは、主人にお給金として金のかたまりをひとつもらい、自分の家をめざして旅にでました。すると、馬に乗った男に出会いました。馬に乗れば道がはかどると思ったハンスは、金のかたまりと交換し、馬を手に入れました。

馬に乗ったハンスは、最初こそ幸せいっぱいでしたが、いざ馬を走らせようとすると、道に投げだされてしまいます。ちょうどそこへ、牝ウシを引いた農夫がやってきて――。

グリム童話をもとにした絵本です。作者のホフマンは、「おおかみと七ひきのこやぎ」など、数かずの傑作をえがいています。本書では、ハンスの旅は、左から右に進んでいき、出会ったひとびとは背を向けて、舞台から退場していきます。背景はなく、文章はページ下に、字幕のように一列にならんでいて、物語をにごらせることなく、じつに巧みにみせています。瀬田貞二さんの訳はリズミカル。《しゅじんがこたえていうことに、「よくやってくれたからにゃ、たんまりやらねばなるまいよ」》――という具合です。さて、このあとハンスは、牝ウシをブタと、ブタをガチョウと、ガチョウを砥石と交換します。わらしべ長者の逆をゆくような、愉快な一冊です。小学校低学年向き。

2013年6月9日日曜日

かもさんおとおり















「かもさんおとおり」(ロバート・マックロスキー/作 わたなべしげお/訳 福音館書店 1980)

カモのマラードさんと、マラード奥さんは、巣をつくる場所をさがしていました。ボストンの公園の池でひと晩休んだあと、議事堂の上を飛び、ルイスバーグ広場を越えて、チャールズ川の中州に降りました。マラードさんと奥さんは、ここに巣をつくることに決めました。

マラードさんと奥さんの羽根は生え変わり、飛ぶことができなくなります。でも、泳ぐことはできるので、川岸の公園までいき、派出所のおまわりさんからピーナツをもらいます。そのうち、奥さんは8つのタマゴを生み、8羽のヒナ生まれます──。

「すばらしいとき」や「サリーのこけももつみ」で知られる、ロバート・マックロスキーの代表作。すでに古典となった一冊です。白黒の2色でえがかれた絵は、素晴らしく生き生きしています。このあと、マラードさんは、1週間後、奥さんや子どもたちと公園の池で落ちあうことにして、川の様子をしらべにでかけていきます。奥さんは、子どもたちにもぐりかたや泳ぎかた、一列にならんで歩くことなどを教え、いよいよ子どもたちを連れて公園に向かいます。おまわりさんの助けを借りながら、奥さんと8羽のヒナたちは一列にならび、道路を渡り、街角を進んでいきます。小学校低学年向き。

1ねんに365のたんじょう日プレゼントをもらったベンジャミンのおはなし















「1ねんに365のたんじょう日プレゼントをもらったベンジャミンのおはなし」(ジュディ=バレット/文 ロン=バレット/絵 まつおかきょうこ/訳 偕成社 1980)

きょう、4月6日はベンジャミンの誕生日です。9歳になったベンジャミンのために、パーティーが開かれました。パーティーが終わり、みんなが帰ったあと、ベンジャミンは、プレゼントの包みを開けるときどんなに楽しかったかを思いだしながら椅子にすわっていました。でも、もうすぐ誕生日が終わり、次の誕生日が365日たたないとやってこないことを考えると悲しくなりました。

ベンジャミンは、プレゼントにもらった鳥かごを、もう一度包み直します。そして次の日の朝、新しいプレゼントをもらったように包みを開きます──。

自分に毎日プレゼントを贈ったベンジャミンのお話です。絵は、線画に少しだけ色を置いた味わいのあるもの。さて、プレゼントにもらったものを全部包み直し、開け直してしまったベンジャミンは、こんどは家のなかのものを包んで自分にプレゼントすることにします。最初に包んだのは、ズボンつり。翌朝包みを開けると、ズボンつりが前よりもっと素敵に思えます。それから、枕や電灯やカーテンや椅子やテレビを包んでいき──と、お話は続きます。小学校低学年向き。

2013年6月5日水曜日

バラライカねずみのトラブロフ















「バラライカねずみのトラブロフ」(ジョン・バーニンガム/作 せたていじ/訳 童話館出版 1998)

トラブロフは、ある宿屋で生まれました。宿屋には、夜ごと楽士たちがきました。楽士たちはジプシーで、田舎をめぐり歩き、演奏をしてお礼をもらっていました。トラブロフはいつも、じっと腰をおろして、音楽に聴きほれ、ときには寝に帰ることを忘れることもありました。ある晩、トラブロフは、大工ネズミのナバコフじいさんに呼ばれ、どうしてそんなに音楽ばかり聴いているのかとたずねられました。「好きでたまらないからです」とこたえると、ナバコフじいさんはバラライカをつくってくれました──。

さて、バラライカをつくってもらったトラブロフでしたが、弾くのはなかなか簡単でないことがわかります。たまたま知りあったジプシーじいさんが、今晩ここを去るというので、トラブロフは家族に内緒でジプシーたちのそりに忍びこみ、旅にでようと決心します──。

バラライカは、200年ほど前にできた、ギターによく似たロシアの楽器です。作者のジョン・バーニンガムは、「ガンビーさんのドライブ」などの作者として高名。初期の作風である濃厚さをもつ本書は、雪深い田舎の感じがよくでています。このあと、トラブロフは、ジプシーじいさんから熱心にバラライカの弾きかたを教わります。いっぽう、トラブロフのお母さんは、トラブロフがいなくなったため、心配のあまり病気になってしまいます。そこで、トラブロフの妹が兄をさがしにでかけて──と、お話は続きます。小学校低学年向き。

2013年6月4日火曜日

ぼくねむくないよ















「ぼくねむくないよ」(アストリッド・リンドグレーン/文 イロン・ヴィークランド/絵 ヤンソン由実子/訳 岩波書店 1990)

ラッセは絶対に寝たくない、5歳の男の子でした。お母さんが、「もう寝る時間よ」というと、ラッセは「あとちょっとだけ」といいました。そして、台所のテーブルからちょっとだけ4回飛び降りたり、くつ下の穴に指を入れて、もっと大きくならないかとのぞいたりしました。

しまいに、お母さんはこの「ちょっとだけ」がまんできなくなり、ラッセをつかまえて、服を脱がせ、ベッドに入れてしまいます。そのあいだ中、ラッセは「ぼく眠くないよ!」と叫び続けます──。

「長くつ下のピッピ」などで高名なリンドグレーンの文章による絵本です。絵は、親しみやすい水彩。さて、ラッセのすぐ上の階には、ロッテンおばあさんというひとが住んでいました。ラッセがロッテンおばあさんのうちに遊びにいったある晩、おばあさんはラッセに「このメガネをかけてみたいかい?」とたずねます。ロッテンおばあさんのメガネは、世界一ふしぎなメガネで、これをかけたラッセは、森のなかに暮らす、クマやウサギや小鳥やネズミの子どもたちの、夜眠るところを目にします。お話はちょっと長めですが、読みやすい読物絵本です。小学校低学年向き。

2013年6月3日月曜日

ぶんぶんぶるるん















「ぶんぶんぶるるん」(バイロン・バートン/作 てじまゆうすけ/訳 ほるぷ出版 1975)

ぶんぶんぶるるんと、ミツバチが飛んできて、牡ウシをちくりと刺しました。牡ウシは跳ねまわり、おかげで牝ウシはご機嫌ななめ。ミルクしぼりのおばさんを、ミルクと一緒に蹴飛ばしました。

蹴飛ばされたおばさんは、怒っておじさんに八つ当たり。いらいらしたおじさんは、ラバのお尻をひっぱたき、ラバはヤギの家を蹴りこわして──。

どんどん話がつながっていく絵本です。絵は、黒い描線にはっきりした色がつけられた、遠目のきくもの。このあと、ヤギ、イヌ、ガチョウ、ネコ、小鳥と続き、最後にまたミツバチにもどります。みんなの不満がどんどんつながっていくさまをえがいた、ユーモラスな一冊です。小学校低学年向き。