2012年10月11日木曜日

だるまちゃんとかみなりちゃん










「だるまちゃんとかみなりちゃん」(加古里子/作 福音館書店 1968)

だるまちゃんが外に遊びにいこうとしたら、雨が降ってきました。カサをさしてでたら、変なものが落ちてきました。そして、ぴかぴか、ごろごろ、がらがら、どしんと、小さなかみなりちゃんが落ちてきました。

落ちてきたかみなりちゃんは、木の枝に引っかかってしまった変なもの(浮き輪)をとってほしいと、だるまちゃんにいいます。だるまちゃんは、飛び上がったり、飛び跳ねたり、かみなりちゃんを肩車したりしますが、それでも変なものには届きません。そこで、だるまちゃんは、カサを投げて変なものを落とそうとするのですが──。

「だるまちゃん」シリーズの一冊です。作者のかこさとしさんは、「あなたのいえ わたしのいえ」「マトリョーシカちゃん」など、多くの傑作をえがいています。さて、このあと、投げたカサは、変なものと一緒に木にぶら下がってしまい、あてが外れただるまちゃんとかみなりちゃんがべそをかいていると、そこに、かみなりちゃんのお父さんのかみなりどんが、雲を運転してあらわれます。カサと変なものをとってくれたかみなりどんは、だるまちゃんを雲に乗せて、かみなりの国に連れていってくれます──。どこもかしこも鬼の意匠がほどこされた、かみなりの国がまた楽しい、じつに愉快な一冊です。小学校低学年向き。

2012年10月9日火曜日

へんてこへんてこ











「へんてこへんてこ」(長新太/作 佼成出版社 1988)

森を通ってずっといった山のなかに、川があり、そこに橋がありました。その橋を渡ると、からだがニューッと伸びてしまうので、人間たちは怖がって、橋を渡りませんでした。ネコがその橋を渡ると、ネーコーという感じになりました。橋を渡りきると、ネコのからだはスーッと元通りになりました。

動物たちは次つぎに橋を渡り、イヌはイーヌーに、タヌキはターヌーキーに、ブタはブーターになってしまいます。

「ごろごろにゃーん」などで高名な長新太による絵本です。絵は、ぺたぺたという感じで塗られた水彩。このあとはくり返しです。ゾウがきて、トリが降りてきて、夕方になると星が降りてきます。タイトル通りのへんてこさですが、不思議におだやかな感じのする一冊です。小学校低学年向き。

2012年10月6日土曜日

おふろだ、おふろだ!












「おふろだ、おふろだ!」(わたなべしげお/文 おおともやすお/絵 福音館書店 1986)

《まあ、ひどい どろんこ!
 まて まて。
 さあ、つかまえた!

 シャワーを あびて、
 かたまで しずむ。

 あったまったら、せなかを ごしごし。
 こんどは ぼくが あらってあげる。》

砂場で遊んで泥だらけになったくまくんは、お父さんと一緒にお風呂に入ります──。

渡辺茂男さんと、大友康男さんのコンビによる、「くまくん」シリーズの一冊です。必要最小限のことだけがえがかれた絵は、あたたかさに満ちています。幼児向き。

以下は余談です。渡辺茂男さんの、児童書についての本「心に緑の種をまく」(新潮社 2007)には、本書についての面白い逸話が記されています。それによれば、アメリカで「おふろだ、おふろだ!」が出版されることになったとき、アメリカの編集者は、「アメリカでは、体を洗うのはバスタブのなか。外で洗うのは間違いだ」と、大友さんに描き直しを要求したのだそう。けっきょく、討論のすえ、アメリカ版のくまくん父子はバスタブのなかで体を洗うことになったということです。

2012年10月5日金曜日

わたしとあそんで












「わたしとあそんで」(マリー・ホール・エッツ/作 よだじゅんいち/訳 福音館書店 1980)

《あさひが のぼって、くさには つゆが ひかりました。
 わたしは はらっぱへ あそびに いきました。

 ばったが 一ぴき、くさの はに とまって、むちゅうで あさごはんを たべていました。

「ばったさん、あそびましょ」 わたしが つかまえようとすると、ばったは とんでいってしまいました。》

〈わたし〉は、カエルやカメやリスやカケスやウサギやヘビと遊ぼうとしますが、みんな逃げていってしまいます。そこで、池のそばでじっとしていると──。

「もりのなか」で高名なマリー・ホール・エッツによる絵本です。すでに古典となり、お話会などでもよくつかわれます。絵は、柔らかい味わいの線画に、少しだけ色がつけられた、非常に魅力に富んだもの。このあと、じっとしている〈わたし〉のところに、動物たちがもどってきます。「ああ わたしは いま、とっても うれしいの」という、末尾近くのことばが耳に残ります。小学校低学年向き。

余談ですが、堀内誠一さんは、この絵本の女の子を「絵本のジョコンダ(モナリザ)」と呼んだそうです。

2012年10月4日木曜日

せいめいのれきし











「せいめいのれきし」(バージニア・リー・バートン/作 いしいももこ/訳 岩波書店 1979)

副題は、「地球上にせいめいがうまれたときからいままでのおはなし」。左ページに説明文があり、右ページには、その時代が劇場でくり広げられる光景としてえがかれています。構成も劇を模したものとなっており、生命の誕生から、現代のいまこのときまでが、5幕の劇として展開します。目次を引用してみましょう。

プロローグ(銀河系の説明から前カンブリア代の原生代まで)
1幕 古生代(カンブリア紀から二畳紀まで)
2幕 中生代(三畳紀から白亜紀まで)
3幕 新生代(始新世から氷河時代まで)
4幕 現世(有史以前からアメリカでの白人の暮らしまで)
5幕 このごろのひとびとの生活
エピローグ

劇場の舞台には、天文学者や地質学者といった、さまざまな案内人(ナレーター)があらわれますが、5幕においてはバートン本人があ登場します。そこにえがかれている光景は、バートンが実際に住んでいた家だということです。また、時間の進みかたが徐々に遅くなり、最後にいたって、ついに「いま」とつながる構成は見事のひとことに尽きます。バートンの伝記「ヴァージニア・リー・バートン」(バーバラ・エルマン/著 宮城正枝/訳 岩波書店 2004)によれば、バートンはこの作品を完成させるのに、8年の歳月をかけたということです。まさに、バートン畢生の大作というべき一冊です。小学校高学年向き。

2012年10月2日火曜日

名馬キャリコ










「名馬キャリコ」(バージニア・リー・バートン/作 せたていじ/訳 岩波書店 1974)

はるか西部のサボテン州に、キャリコという馬がいました。みめうるわしくはありませんでしたが、頭はめっぽう切れましたし、足の早さはとびきりでした。キャリコは、カウボーイのハンクの馬でした。オオカミの群れから、赤ん坊のキャリコを助けてくれたのがハンクだったので、キャリコはその恩を忘れず、ハンクのためならこの世の果てまでいくつもりでした。

さて、平和なサボテン州に、ある日、5人組の悪漢たちがあらわれます。悪漢たちは、太った牛をひと群れ盗みだし、ふくろ谷にかくしてしまいます。それに気がついたサボテン州のカウボーイたちは、悪漢たちのボス、すごみやスチンカーに賞金をかけるのですが──。

「ちいさいおうち」で高名な、バージニア・リー・バートンによる、西部劇風の絵本です。小振りで横長の体裁で、絵は白黒、マンガのようにコマ割りされ、コマの下に文章が書かれています。また、紙の色が次つぎに変わっていくのも、特徴のひとつです。このあと、キャリコが頭をつかって、一度はスカンチーを捕まえるのですが、スカンチーはまんまと脱獄、一味とともに馬車強盗をたくらんで──と、ストーリーは波乱万丈、まだまだ続きます。バートンのデザインのセンスと、動きの表現のうまさが堪能できます。ちなみに、キャリコはメスの馬です。小学校中学年向き。

2012年10月1日月曜日

おがわのおとをきいていました












「おがわのおとをきいていました」(スズキコージ/作 学研マーケティング 2005)

はるかはるか北の国のお話。はなめんちゃんは、今度こそ目の前の小川を飛びこえようと思っていました。前に、この小川を飛びこえようとしたときは、小川に落っこちてしまったのです。

深く息を吸い、はなめんちゃんが小川を飛びこえようとすると、「がんばれえ」と小さな声がします。向こう岸のキリギリスが応援してくれたのです。それから、トノサマガエルが顔をだして、「へえ、助走なしでこの小川を飛びこえるつもりかい」と、はなめんちゃんに話かけてきて──。

「あつさのせい?」など、数かずの作品をえがいたスズキコージによる絵本です。絵は、おそらく水彩の厚塗り。じつにエネルギッシュな画風です。このあと、はなみんちゃんはトノサマガエルに、「うるさいわねえ、わたしはいまこそこの小川を飛びこえるの。どいてちょうだい」と、いい返したあと、フナたちの声援をうけながら、はっと向こう岸にむかってジャンプして──。最後まで読んだとき、タイトルの意味がわかるしかけになっています。小学校低学年向き。