2012年8月9日木曜日

ヨッケリなしをとっといで






「ヨッケリなしをとっといで」(フェリックス・ホフマン/作 おかしのぶ/訳 架空社 2000)

《ヨッケリ なしを とっといで
 だけど なしは おちたくないよ

 すると おやかた いぬに いった
 ぱくっと ヨッケリ かんどいで

 いぬは ぱくっと かみたくないよ
 ヨッケリ なしを とりたくないよ
 なしは まだまだ おちたくないよ

 すると おやかた ぼうに いった
 ごつんと いぬを ぶっといで》
……

「おおかみと7ひきのこやぎ」などの作者として高名なホフマンによる絵本です。本書の副題は「スイスのわらべうた」。このわらべうたは、積み上げ話になっています。親方の命令で、このあと炎や水や子ウシや肉屋があらわれるのですが、みんないうことをきかないので、とうとう親方が登場し、すると話は急転直下、クライマックスをむかえます。積み上げ話を絵本にするため、横長の紙面がじつに効果的につかわれています。小学校低学年向き。

2012年8月8日水曜日

うちがいっけんあったとさ










「うちがいっけんあったとさ」(ルース・クラウス/文 モーリス・センダック/絵 わたなべしげお/訳 岩波書店 1978)

《うちが いっけん あったとさ──
 りすの うちでは ありません
 ろばの うちでも ありません
 ──しりたかったら さがしてごらん──
 どこの とおりに あるのかな
 どこの よこちょうに あるのかな──
 ぼくだけ しってる うちなのさ。》

そのうちには、とても素敵なベッドがあり、とても素敵な棚があり、壁は落書きするため、テーブルはぽんと両足のせるため──。

「にんじんのたね」などの作者、ルース・クラウスによる詩に、センダックが絵をつけた絵本です。二人の作品には「あなはほるものおっこちるとこ」があります。茶色の紙に、ぼうやの〈ぼく〉だけが、白抜きに青いオーバーオール姿でえがかれ、〈ぼく〉以外はみな、ひと筆書きのような、ユーモラスな線画でえがかれています。さて、〈ぼく〉は、どこにいくにもサルにスカンク、カメにウサギに大男にライオンじいさんを連れていきます。ライオンじいさんは椅子の詰めものが大好きで、もぐもぐ食べてしまうし、サルはとんぼ返りをして、天井にとんとん足跡をつけていきます。ところで、「ぼくだけしっているうち」は、一体どこにあるのでしょう。渡辺茂男さんの訳文もじつにみごと。詩と絵が一体となって踊っているような、素晴らしくリズミカルな一冊です。小学校低学年向き。

2012年8月7日火曜日

7ひきのいたずらかいじゅう








「7ひきのいたずらかいじゅう」(モーリス・センダック/作 なかがわけんぞう/訳 好学社 1980)

《こりゃ たいへん!かいじゅう 7ひき でてきたぞ

 1ばんめは そらを とびまわり、
 2ばんめは じめんに もぐる。

 3ばんめは まちへ のそ のそ のそ やってきて、
 4ばんめは きのはを ぜんぶ たべちゃうぞ》

センダックによる、小さな、軽みのある絵本です。横長の紙面に、おそらく色鉛筆でえがかれた絵が、ときどきコマを割りながら続いていきます。絵は、さっと描かれたのも。、町のひとたちが大砲でかいじゅうに応戦しているものの、弾が届いた様子はみられません。7匹のかいじゅうの特徴はそれぞれユニーク。6番目は屋根の上で寝坊し、7番目は自分の頭を自分で引きちぎります。「かいじゅうたちのいるところ」とはひと味ちがう、センダックのさっぱりした仕事がみられます。小学校低学年向き。

2012年8月6日月曜日

木はいいなあ











「木はいいなあ」(ジャニス・メイ・ユードリイ/文 マーク・シーモント/絵 さいおんじさちこ/訳 偕成社 1977)

《木が たくさん あるのは いいなあ。
 木が そらを かくしているよ。

 木は 川べりにも たにそこにも はえる。
 おかの うえにも はえる。

 木が たくさん はえると、森になる。
 森は いつも いきいき している。

 たった 一ぽんでも、木が あるのは いいなあ。
 木には はっぱが ついている。
 はっぱは なつじゅう、そよかぜの なかで、
 ひゅる ひゅる ひゅるーっと、くちぶえを ふいているよ。》

タイトル通り、「木はいいなあ」ということを語った絵本です。原題は「A TREE IS NICE」。タテに長い絵本で、カラーと白黒が交互にくる構成です。カラーは大変鮮やかで、生き生きとした線でえがかれた親しみやすい水彩が、さまざまな光景をみせてくれます。木はいいなあ、枝にすわってじっと考えることもできるし、海賊ごっこもできる。リンゴの木だったら木に登ってリンゴをとる。棒切れも木からとれる。棒切れで砂に絵を描くんだ…と、木の賛歌はまだまだ続きます。「こんなにはっきり作品の意図を素直に表している絵本の文は珍しいと思います。そのままついていっただけで、この絵を描くことができました」と、ユードリイの文章について、マーク・シーモントはカバー袖にある文章のなかで述べています。1957年度コールデコット賞受賞。小学校低学年向き。

2012年8月4日土曜日

かいじゅうたちのいるところ













「かいじゅうたちのいるところ」(モーリス・センダック/作 じんぐうてるお/訳 富山房 1975)

ある晩、マックスはオオカミのぬいぐるみを着ると、いたずらをはじめて、大暴れ。お母さんが、「このかいじゅう!」と怒ると、マックスも「おまえを食べちゃうぞ!」といい返します。とうとう、マックスは夕ごはん抜きで寝室に放りこまれてしまいました。

マックスが寝室に放りこまれると、寝室ににょきりにょきりと木が生えてきて、あたりはすっかり森や野原になります。マックスは船に乗り、1年と1日航海して、かいじゅうたちのいるところに到着します──。

センダックの代表作です。絵は、線画に色づけしたもの。登場人物は、マックスとかいじゅうたちのみ。お母さんはセリフだけの登場です。部屋のなかに木が生えてくると、絵は紙面いっぱいに広がります。かいじゅうたちの造形は、50年たったいまでも、まったく色あせていません。このあと、マックスはかいじゅうたちの王様になるのですが、さみしくなって、うちに帰りたくなり…と、物語は続きます。絵本の歴史に残る一冊ですが、そんなことより、いま読んでもとても面白い絵本です。1964年コールデコット賞受賞作。小学校低学年向き。

以下は余談です。「かいじゅうたちのいるところ」は1966年にも日本語訳されています。そのときのタイトルは、「いるいるおばけがすんでいる」(ウエザヒル翻訳委員会/訳 ウエザヒル出版社 1966)。奥付をみると監修委員は、木下一雄、黒崎義介、坂元彦太郎、ハル・ライシャワー、三島由紀夫。翻訳・編集委員は、園一彦、坂出寿栄、阪井妙子、M・ウエザビー、R・フリードリック。さて、どんな訳なのか冒頭を引用してみましょう。

《あたりが くらく なりました
 マックスぼうやの せかいです
 「こんやは なにを しようかな
 おおかみごっこを してみよう」

 「さあどうだ! おおかみぼうやの マックスだ!」

 「まあ こわい!」
 おかあさんが ふるえます
 びっくりぎょうてん ふるえます

 「たべちゃうぞ!」

  ぼうやが あまり さわぐので
 とうとう ぼうやは ねどこべや

 「ばんごはんも あげません!」

 ぼうやは ひとりで おこります
 おへやで ぷんぷん おこります》

ちなみに原文はこんな風です。

《The night Max wore his wolf suit and made mischief of one kind

and another

his mother called him “WILD THING!”
and Max said “I'LL EAT YOU UP!”
so he was sent to bed without eating anything.》

2012年8月2日木曜日

あなた










「あなた」(谷川俊太郎/文 長新太/絵 福音館書店 2012)

《ずっとまえ
 わたしは おかあさんの
 おなかにいた

 でもいま わたしは わたし
 おかあさんは おかあさん
 あなたとは よばないけど
 おかあさんも あなたの ひとり》

名作「わたし」と同じ作者たちによる一冊です。女の子の〈わたし〉が、〈あなた〉について、考えをめぐらせます。友だちのさっちゃんは〈あなた〉。〈わたし〉とは顔もちがうし、背丈もちがう。〈わたし〉がひとりしかいないように、〈あなた〉もひとりしかいない…。絵は、晩年の長新太さんが好んだ、オレンジとピンクが強い画面。〈わたし〉の考えはどんどん伸びて、〈あなた〉は世界や未来に広がっていきます。小学校低学年向き。

2012年8月1日水曜日

ぼくのライトとたんぽぽ











「ぼくのライトとたんぽぽ」(ウイリー・ウェルチ/作 マーク・シーモント/絵 よこやままさこ/訳 ドレクみわ/訳 ブック・グローブ社  1996)

夏の土曜日は、みんなで校庭にいって野球をします。いちばん強くて、走るのが早い子がショートや一塁をやります。でも、ぼくの守る場所はいつもライト。ライトはだれだって守れるのです。ぼくは、外野のタンポポが大きくなっていくのをみながらライトを守ります──。

マーク・シーモントは「はなをくんくん」などの作者として高名です。絵は水彩。ちょっとしょぼくれた感じの男の子が、余白を生かしたレイアウトのなかで、たくみにえがかれています。文章は〈ぼく〉の独白。このあと、みんなが突然〈ぼく〉のほうをみて、空を指さします。すぐに態度を入れ替えてしまう〈ぼく〉が、ほほえましいです。小学校中学年向き。