「かさの女王さま」(シリン・イム・ブリッジズ/文 ユテウン/絵 松井るり子/訳 2008)
タイの山あいに、何百年ものあいだカサをつくり続けてきた村がありました。その村のカサは、どのカサも、村の女のひとの描いた花とチョウでかざられていました。毎年、お正月には、村いちばんの絵つけをした「カサの女王」が選ばれ、そのひとを先頭に、雄大なカサ行列がおこなわれました。
さて、小さなヌットはお母さんにお願いして、カサに絵つけをしてみます。出来映えは上々で、「すこし練習すれば、ヌットはいい絵つけ師になれるぞ」と、お父さんがぎゅっと抱きしめてくれます。次の日、ヌットは5本のカサに、自分の好きなゾウの絵を描くのですが、「花とチョウの絵を描くんだよ」と、お父さんに注意されます。村では花とチョウの絵しか売りません。絵つけは遊びではなく仕事なのです──。
タイの、カサをつくり続けている村に住む、ヌットという女の子のお話です。絵は、おだやかな色づかいが美しい、版画調のもの。このあとヌットは、昼間はせっせと花とチョウの絵を描くのですが、夕方には余った竹と紙で小さなカサをつくり、そこにゾウの絵を描いて窓辺にかざるようになります。お正月が近づくと、冬の宮殿にやってきた王さまが、カサの女王を選ぶため、村におこしになることになります。そしてお正月、村人たちが最高のカサを広げた通りを、王さまはゆっくりとごらんになっていき…。おそらく、表紙にはこのあとのことが描かれていると思われます。小学校低学年向き。
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