2012年3月15日木曜日

女トロルと8人の子どもたち











「女トロルと8人の子どもたち」(グズルン・ヘルガドッティル/文 ブリアン・ピルキングトン/絵 やまのうちきよこ/訳 偕成社 1993)

女トロルのフルンブラは、ある日、大きくてみにくい男トロルに出会って夢中になりました。男トロルは遠いところに住んでいて無精者だったので、フルンブラの家にきてくれません。でも、フルンブラが会いにいくと、男トロルはとても喜んで、2人は抱きあってキスをして、転げまわりました。すると、山はふるえ、地面はぐらぐら揺れて、人間たちは「あっ、地震だ!」と叫ぶのでした。

ある晩、フルンブラは8人の男の子を生みます。8人とも父親に似て、見た目はよくないのですが、フルンブラはなんてきれいな子たちだろうと思います。そして、人間たちが「なんの音だろう?」と首をかしげるようなうなり声をあげながら考えて、子どもたちに、おおかわいい子、まあかわいい子、なんてかわいい子、とってもかわいい子、すごくかわいい子、ほんとにかわいい子、めちゃかわいい子、なんともかわいい子と、名前をつけます──。

副題は「アイスランドの巨石ばなし」。アイスランドを舞台にした絵本です。お父さんが巨石のもとで、ヨーンという男の子に、トロルのお話をするという形式で物語は語られます。まず、お父さんは山に住むトロルについてこんな風に説明します。

トロルは大きなからだで、手のひらにヒツジをのせられるほどの力もち。100年に一度だけする掃除のときは、家のなかのものを全部山の割れ目から外に放りだします。すると、山から石が吹き飛んで、大きな岩がくずれ落ち、山のかたちが変わってしまいます。ごちそうをつくるのは、100年か、1000年に一度だけ。トロルが大きなかまどに火を焚くと、山からもくもく煙がわいて、ふもとの山まで灰が降ってきます。

そして、このあとお父さんは、上記した女トロルのフルンブラの話をはじめます。さて、その話の続きですが、フルンブラはお乳が止まったとたん、父親の男トロルのことを思いだし、子どもをみせにいこうと思い立ちます。トロルは日に当たると石になってしまうので、日が暮れてから、フルンブラは子どもたちを連れ、急いで出発するのですが…。絵は、質感がよく表現されたもの。愛情深い女トロルのフルンブラが印象的な、気持ちが大らかになる一冊です。小学校中学年向き。

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