「セミ神さまのお告げ」(宇梶静江/古布絵制作・再話 福音館書店 2008)
昔、北の海辺に2つの村がありました。海辺のそばの下の台地にあるのが、ランペシカ・コタン、上の台地にあるのがリペシカ・コタンでした。下の台地のランペシカ・コタンには、六代の人の世を生きてきたおばあさんがいました。ウバユリの花が咲くころ、おばあさんはこんな歌をうたいはじめました。「下の台地のランペシカ・コタンの人々よ。上の台地のリペシカ・コタンの人々よ。坂をのぼり、高い台地にうつりなさい。海から津波が押しよせ、山から津波が押しよせ、海津波と山津波がひとつになり、大津波となってやってくる──」
おばあさんは昼も夜もうたい続け、上の台地のリペシカ・コタンの村人たちは、おばあさんのお告げにしたがって、さらに上の高い台地に家をうつします。すると、ある日、おばあさんの予告どおり、海津波と山津波が押しよせ、おばあさんとわずかに生き残ったランペシカ・コタンの村人は、海に流されてしまいます──。
アイヌの昔話をもとにした絵本です。前作の「シマフクロウとサケ」と同様、絵にあたる部分は、アイヌ刺繍によってえがかれています。おばあさんの歌の表現など、思わず目を見張ります。このあと、海に流されてしまったおばあさんが、海の主であるアトゥイコルカムイ・エカシにむかって歌をうたうと、アトゥイコルカムイ・エカシは腹を立て、おばあさんを手のひらで握りつぶし、六つ地獄へ突き落としてしまい…と、まだまだお話は続きます。巻末に、作者による「この絵本を読んでくださった方へ」という文章があり、作品の理解を助けてくれます。小学校中学年向き。
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