「1つぶのおこめ」(デミ/作 さくまゆみこ/訳 光村教育図書 2009)
昔、インドのある地方に、ひとりの王様がいました。王様は、とれたお米を、ほとんど自分の米倉にしまってしまいました。「米はわしがちゃんとしまっておく。飢饉の年がやってきたら、しまっておいた米をみなに分けあたえよう」と、王様はいいました。
何年ものあいだ豊作が続き、王様の米倉はいっぱいになりました。ところが、ある年飢饉がやってきて、ひとびとの食べるお米がなくなってしまいました。「お約束通り、米倉のお米をひとびとに分けあたえてください」と、大臣たちが頼みましたが、王様は怒鳴り声をあげました。「ならぬ! 飢饉は長く続くかもしれん。約束があろうとなかろうと、王がひもじい思いをするわけにはいかんのだ」
副題は「さんすうのむかしばなし」。絵は、インドの細密画の技法をつかったもの。さて、このあと、王様の宴会のために、1頭のゾウが米を入れたかごを2つはこんでいきます。ところが、片方のかごからお米がこぼれ落ちているのに気がついた村娘のラーニは、落ちてくるお米をスカートで受けとめ、王様に返します。感心した王様が、「なんでも好きなものをほうびにとらせよう」というと、ラーニはこうこたえます。「お米を1粒くださいませ。そして、30日のあいだ、それぞれ倍の数だけお米をくださいませんか」──。かしこいラーニの計画通り、もらうお米はどんどん増えていきます。見開きでえがかれる30日目の絵は圧巻です。小学校中学年向き。